第1回定例会 本会議報告
 
◇東京の明日を語ろう。
-第1回定例会(2004年2月25日~3月30日)-
(1) 石原知事所信表明
2月25日、第1回定例会が開催され石原知事より施政方針についての所信表明がありました。その冒頭で知事は「日本は今、『国家破綻』とも言える危機的な状況に直面しています。国家予算の歳出の半分が借金で賄われ、国と地方を合せた債務残高は、GDPの約1.4倍に当たる700兆円という天文学的な数字にまで膨らんでおります。わが国の財政がこのように極度に歪んだ状態に陥ったのは、第二次世界大戦以来のことであります。こうした危機を客観的に捉えられないところに、今日の日本の危機の本質があります。国の政治家も官僚も、目の前にある危機を正視しようとせず、その場凌ぎの彌縫策に汲々とするばかりであり、事態は修復不可能なレベルに達しようとしております。」と情勢分析を行った上で、「既存の利害関係という呪縛から脱することができないようでは、21世紀に相応しいこの国の新しい行政システムを創り出すことはできないと思います。」として、今議会の主要課題について述べました。
(東京から始めた改革の波)
・日本全体の利益のために行動を起こすことがなによりも重要。
・東京都は、その先頭に立って地方自治の新しい形を模索し、日本再浮上の道筋を切り拓く。

◇ 東京再生を目指す政策の展開
(環境問題への積極的な取り組み)
〈ディーゼル車規制の成果〉

・来年度も、粒子状物質減少装置の装着費補助を継続。
・自動車Gメンによる違反車両の取り締まりを徹底。

〈地球温暖化対策の推進〉
・朝霞浄水場をはじめ8か所の浄水場で、ろ過池の上部で太陽光発電を実施。
・森ヶ崎水再生センターで、下水汚泥によるバイオマス発電事業をPFI方式で開始。

〈自然環境の保護と活用〉
・小笠原に自然保護の専門家であるレンジャーを都独自に配置。
・小笠原をユネスコの世界自然遺産登録を目指し、関係機関と協力して取り組む。
・御蔵島で4月よりエコツーリズムを実施。

(着実に進める都市再生)
〈羽田の整備促進と横田の共用化〉

・羽田空港の再拡張・国際化が来年度より始動。
・横田の軍民共用化について、国が重い腰を上げ、具体的な取り組みが開始。

〈三環状道路等の整備促進〉
・圏央道予定地の土地収用を巡り、東京高裁で執行停止を取り消す決定。
・外環道は、先月から環境影響評価の現地調査に入った。
・「スムーズ東京21拡大作戦」を5か年に百か所で実施。

〈民間賃貸住宅市場の改善〉
・原状回復の費用負担に関する紛争の未然防止を目的とする条例を提案。
・礼金、更新料のない合理的な契約の普及を促進。

(治安の回復)
〈子どもを犯罪に巻き込まない取り組みの徹底〉

・青少年健全育成条例を改正。
・来年度から3年間で全ての公立学校でセーフティー教室を開催。
・警察官OB約100人をスクールサポーターとして定期的に学校に派遣。

〈外国人犯罪対策の強化〉
・東京入国管理局に15人の職員を派遣。
・問題のある日本語学校などに改善指導を実施。
・一致協力して中国人犯罪組織を孤立化させる取り組みを実施。

〈街頭犯罪の防止〉
・退職警察官による「交番相談員」を200人増員。
・交番に駆け込むと自動的に警察署につながる対話型のテレビ電話を導入。
・4月から、都職員100人を警視庁に派遣。
・警察官200人の増員や警察官OBの再雇用拡充などにより、1,000人規模の警察力を増強。
・来年度、防犯カメラなどに対する補助の枠を百か所分確保。
・「まちかど防犯隊」などのボランティア活動に対する支援策を実施。
・原宿警察署に移転に伴い周辺と調和したまちづくりを民間活力の導入によって進めるなかで、大規模な留置場を整備。
・「臨海警察署(仮称)」の整備や鮫洲の都有地など、様々な機会を捉えて留置場を確保。

(直面する危機への対応)
〈東京湾の危機管理〉

・来年度、港湾設備に監視カメラやフェンス、照明を設置するなど、24時間の監視体制を強化。
・危機管理に万全を期すため港湾整備条例を全面的に改正。

〈住宅火災への備え〉
・全国で初めて、全ての新築住宅に対して火災警報器の設置を義務付けるよう条例を改正。

〈都民の健康と食の安全〉
・生産から流通、消費に至る各段階での食の安全、安心を確保するため「食品安全条例」を提案。

〈三宅島の復興〉
・「1日も早く帰島を」という島民の皆様の切実な願いに応えるため、着実に準備を推進。

(東京の産業の活性化)
〈中小企業への金融支援の充実〉

・中小企業の再生を目的とするファンドを来年度新たに創設。

〈新銀行の創設〉
・「新銀行東京(仮称)」の業務運営の基本的な指針となるマスタープランを策定。平成17年春以降の開業を目指す。

〈しごとセンターの設置〉
・今年の夏を目途に、就職の相談、紹介、能力開発などをワンストップで行う「しごとセンター(仮称)」を都独自で開設。

(医療、福祉改革の推進)
〈救急医療の充実〉

・今年の夏を目途に、ビル火災や大規模な交通事故、NBCテロなど都市型災害の際に活動する「救急災害派遣医療チーム(東京DMAT)」を創設。
・救急車に気管挿管などができる救急救命士を乗せるなど、救命率の向上につなげる。

〈脱法ドラッグの規制〉
・来年度、専門家による調査会とドラッグGメンを新設。

〈福祉改革の推進〉
・認証保育所について、来年度は、民間事業者の参入をさらに促進し、駅前型を中心に増設を図る。
・痴呆性高齢者のためのグループホームを今後3か年で集中的に増設。
・福祉・保健・医療の各分野が一体となった介護予防事業を実施する「モデル地区」を選定し、重点的に支援する。
・児童相談所の職員には立入調査権が認められているが、現実には親の抵抗により立ち入りできないケースがあることから、国に対し法改正を強く求める。

〈ホームレス対策〉
・来年度から区と共同で、公園でテント生活を送るホームレスを対象に、民間アパートや都営住宅を低家賃で貸し付け、就労支援や生活相談などを行う新たな取り組みを開始。

(教育の抜本的な改革)
〈都立高校改革の推進〉

・来年度から、校長の裁量権をさらに拡充し、夏休みなどの日数や時期を弾力的に決められる制度を導入。

〈首都大学東京の設立〉
・名称を「首都大学東京」とし、平成17年春の開学を目指す。
・弾力的なカリキュラムを設定できる「単位バンク」を導入。

(観光まちづくりの推進)
・観光まちづくりの牽引役となるリーダーを養成し、区市町村や民間施設を活用した観光案内窓口を百か所新設。
・来年度、天王洲や芝浦などの運河をまちづくりと一体的に整備。
・東京の魅力を広く世界にPRし、外国人旅行者の誘致につなげる。


◇ 改革推進のための都政の新しい枠組み
・平成16年度予算案については「第二次財政再建推進プラン」の初年度として「財政再建の新たな一歩を踏み出し、東京の再生を確実に進める予算」と位置づける。
・職員定数については、業務の効率化を進め、1,444人を削減する一方で、重点事業などに対して必要な人員を措置。
・組織については、都市計画局、住宅局、建設局の再編による「都市整備局」や、福祉局と健康局の統合による「福祉保健局」の設置など、直面する政策課題に的確に対応。都政を横断的、総合的に調整する役割を明確にするため、知事本部を「知事本局」に改称。
・IT化をさらに進めるため、今月、都と51の区市町村による協議会を立ち上げ、住民票になどの電子申請や電子調達の共同運営事業に着手。


なお、この他に警視総監による都内の治安状況の報告。監査委員報告。包括外部監査人説明。更に、青木英二都議(目黒区)から、「海外調査団報告」がありました。
(2)代表質問
3月2日には、都議会本会議で「代表質問」が行われ名取幹事長が都議会民主党を代表して、(1)平成16年度予算案について、(2)中小企業への金融支援について、(3)産業振興について、(4)労働行政について、(5)環境政策について、(6)住宅政策について、(7)福祉改革推進について、(8)特別支援教育について、(9)青少年問題について、(10)治安対策及び総合危機管理についての10課題、41項目に渡って質疑を展開しました。
その中で、新銀行について設立意義、中小企業に対する役割、地域金融機関との連携、都との関係について質し、議論の正常化の一歩を踏み出しました。また、支援費制度の下で昨年実施されたホームヘルプについて国の負担分である1/2を下回る補助金額を提示したことに対する見解について石原知事は「正に現場を持たない紙の上での数字合わせであり、国の財政破綻のツケを自治体と国民に押し付けることは許されない」と怒りを示しました。
(3)一般質問
3月3日、4日には、一般質問が行われ、大津も一般質問に立たせていただきました。なお、都議会民主党から大津を含め4都議が質疑に立ちました。選挙を支援していただいた方々をはじめ多くの皆さんが傍聴に来てくれました。感謝です。
相川博都議(八王子)の「空・山・川・街の切口からセキュリティからアメニティへの視点での防災都市計画樹立の提言」は、石原知事をも唸らせるものでした。相川都議の質問は、「基本計画は防災機能の視点に偏り、アメニティの視点に欠けている。非常時の空域活用のルールづくりや建設残土を活用した眺望公園、河川網の整備など、都市の景観、眺望、緑地などの視点も考慮した都市計画を提案する」と言うもので、知事は「同感だ。戦後の無計画な復興が残念な結果をもたらしたが、これから施策を講じる際には複合的・重層的な分析を重ね方向性を定めるべきだ。提案を参考にしながら、できる限り東京の魅力向上に努める。」と積極的に評価する姿勢を示しました。

大津ひろ子は、(1)治安対策について、(2)DV防止法改正に関する東京都の取り組みについて、(3)千客万来の世界都市・東京について、(4)ものづくり人材の育成についての4課題を取り上げ、知事、警視総監及び関係局長に質しました。

その中で、「DV法改正に関する東京都の取り組み」について、知事からDV被害者を犯罪被害者との関連で捉えた答弁が出されたことは、この課題の前進です。また、電話ボックスなどに氾濫するピンクビラをなくすため、富田俊正都議(新宿区)が提案した「公共物への広告を活用」したらどうかとの提案に、そのことも視野に入れて検討を進めているとの考え方が示されました。

翌日の新聞報道できは、「千客万来の世界都市・東京について」の中で取り上げた「東京国際映画祭」に関して、『東京国際映画祭開催地に渋谷とはミスマッチ』と、知事の答弁を受け取り上げられました。知事の指摘は開催地の熱意が欠けるとのものですが、私は、決してそうは思ってはいません。

柿沢未途都議(江東区)が取り上げた「緑内障早期発見に資する検査体制の充実」を求めたことに対し、健康局長、病院経営本部長からの前向きな答弁を引き出したことは評価されるものです。今後更に、追い続け課題の解決に向け会派として努力していきたいと思います。この「緑内障」の課題は、他に生命保険に加入しづらいことや、柿沢都議も質問の中で触れた、運転免許の課題などがあります。

山下太郎都議(北多摩第4)は、昨年起きた、韓国の地下鉄火災事故やオウムサリン事件を引き合いに出しながら、地下鉄の安全対策について質しました。

一般質問に立った都議は、2日間で25名にも上りましたが、今定例会の争点である新銀行に触れた質問は“0”。青少年健全育成条例も“0”。食品安全条例と港湾条例は“1”となっています。一般質問自体、議員個人が取り組んでいる課題や、地域の課題が中心となることから止むを得ないものですが、これから始まる予算特別委員会に比重がかかります。
一般質問終了後、設置が確認された「予算特別委員会」が本会議終了後に招集されました。
(4)中途議決
3月11日に、本会議が招集され、補正予算・組織条例一部改正条例などの先決が必要な議案を議決しました。議案に対する会派の姿勢を示す「討論」については都議会民主党を代表して樋口裕子副幹事長(中野区)が行いました。

討論では、第31号議案「東京都組織条例の一部を改正する条例」については、都議会民主党が予てから主張してきた効率的・効果的な執行体制の整備であるとして賛意を示しました。その中で、福祉保健局については、行政サービスの対象に対するアプローチの仕方が異なる部門が統合されることから、困難さがあると認識するものの行政サービスを受ける都民の立場に立った対応を求めました。また、第154号議案「平成15年度東京都一般会計補正予算(第五号)」については、東京の社会資本の整備に必要な事業量を確保するとともに、年度初めの端境期における事業執行の平準化を図ったものとして評価し、将来の財政運営に配慮した財政調整基金への積立を考慮し止むを得ないものとの考え方を示すなど、全ての議案に賛成するとの姿勢を示しました。

なお、「社会福祉施設等の整備費の国庫補助(負担)に係る協議基準等に関する意見書」が全議員による議員提出議案として出され即決されました。この課題は、先の本会議で多くの会派が取り上げた特養などの社会福祉施設整備費の国庫補助が一方的に削減されていることに抗議するものです。
(5)予算特別委員会
39名の委員による予算特別委員会は、会派代表による総括質疑を3月12日に、その後、15日、16日と一般総括質疑、そして、25日に会派代表による締め括り総括質疑が行われ、26日に付託議案の採決が行われました。
●「予算特別委員会〈会派代表総括質疑〉」
都議会民主党は青木英二政調会長より「新銀行」について、中小企業のメ光モとなることの確認と、一定の時期を見て見直しを行うことを確認しました。また、「食品安全条例」については、都・都民及び事業者のパートナーシップの確立、リスクコミュニケーションの充実などについて踏み込んだ質疑を展開しました。

●「予算特別委員会〈総括質疑〉」
1日目は、10人の都議が質疑に立ち、午後9時過ぎまで、行われました。
都議会民主党は、樋口裕子都議(中野区)が、保育、障がい者福祉施設の運営、私学の役割、人工降雨、臨海副都心開発などについて、初鹿明博都議(江戸川区)が、今議会に条例提案されている青少年の健全育成や、引きこもり対策などについて取り上げました。
2日目は、9人の都議が質疑に立ち、昨日より少し早まりましたが午後8時半過ぎまで、行われました。
都議会民主党は、土屋隆之都議(板橋区)が、「教育行政」について、花輪智史都議(世田谷区)が、「行政改革」についての一点に絞り込んでの質疑を行いました。

●「予算特別委員会〈締め括り総括質疑〉」
締め括り総括質疑には、都議会民主党を代表して富田俊正都議(新宿区)が質問に立ち「新銀行」について、小企業への融資実績を中間決算、決算期等に公表し総合的に検証することなどを確認しました。また、「都響」については、経営改善の視点から楽員のみなさんの提案を示し、行政改革を担当する総務局から前向きな答弁がありました。更に、表参道同潤会アパート再開発工事の仮囲いについて、地元の視点での質疑を行いました。

●「予算特別委員会〈討論・採決〉」
都議会民主党は、都議会自民党・都議会公明党とともに、第1号議案(新年度予算)について「新銀行」「都響」に関する付帯決議案を提出しました。
採決については、共産党が新年度予算他15議案に反対、生活者ネットが「臨海地域開発事業会計予算」に反対しましたが、知事提出の全議案が採択されました。
なお、討論には相川博都議(八王子)が行い「新銀行」については、「中小企業に対する資金供給、地域金融機関との緊密な連携、適切な監視を求める付帯決議を付すとともに、「官」としての信用力や影響力を背景とせず、公平な競争を行うものとすること、再出資は行わないこと、節目毎に経営計画を検証すること」を改めて求めました。
(6)議案への対応
3月30日に最終日を迎え、都議会民主党は知事提案の議案のうち、第1号議案「平成16年度東京都一般会計予算」に付帯決議を付し、その他の知事提出の全議案に賛成し採択されました。

議案採決に先立って中村明彦総務会長(台東区)が討論に立ち、「平成16年度東京都一般会計予算は、景気の穏やかな回復が見られる中での編成となりしたが、前年度比0.4パーセント減の5兆7080億円、一般歳出で前年度比1.2パーセント減の4兆2,214億円となっています。これは、この間の景気回復傾向により、都税収入の約4割を占める法人2税に1,161億円の増収が見込まれる一方で、銀行税の税率引き下げで昨年度比760億円、税制改正で同345億円のマイナス要因が働き、結果として56億円しか増収が見込めないためです。こうした厳しい財政状況にあっても、本予算では、治安の回復、福祉・医療の充実、中小企業・雇用対策、都市と環境の再生などの、緊急かつ重要な課題に施策を厳選して重点的に予算を配分しており、財政状況を勘案するならば、評価できるものとなっています。

しかし、各自治体がこうした厳しい予算編成を余儀なくされている中にあって、国の怠慢は許されざるものです。小泉内閣の三位一体改革も、自治体には裁量の余地のない国庫負担金を削減し、財源措置は国が配分権を持つ移転財源で賄うとあっては、中央省庁の官僚の言うがままであります。しかし、現場を無視した、戦略なき場当たり的補助金削減が横行しており、自治体への悪影響は看過できないものとなっています。国を変えなければ自治体も活きない、このことを肝に銘じなければなりません。」と都政を取り巻く情勢を整理し、「新銀行」、「青少年健全育成条例」、「食品安全条例」、「労政事務所設置条例」などについて、会派の姿勢を表明しました。
 

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