大津ひろ子の東京都議会発言

大津委員

昨年末に発症が確認されるや、瞬く間に世界中に感染拡大した新型コロナウイルス感染症に関して、国内でも緊急事態宣言が四月七日に発出され、約二カ月弱にわたる、さまざまな自粛要請や社会経済活動制限を経て、ようやく先月二十五日に全面解除されました。今は、安心するのではなく、第二波を見据え、日々の暮らしや働く場所での感染拡大を防止する新しい日常が定着した社会の構築を目指す必要があると考えます。

 さて、昨年十二月の財政委員会におきまして、私は、日銀のマイナス金利政策の長期化やトランプ政権の政策動向次第で経済金融情勢が大きく変動する事態を想定する必要性を指摘した上で、今後の公金管理の方向性についてお伺いしました。その際、局長より、さまざまなシナリオを想定し、あらゆるリスクに備えることが極めて重要と考えていると答弁がありました。
 その直後、私たちは、くしくも誰もが想定していなかった新型コロナウイルス感染症という新たなリスクに直面しました。企業の生産やサービス活動には急ブレーキがかかり、需要が瞬間的に蒸発するなど、個人消費は急減しています。四月の企業倒産件数は、前年同月比一五・二%増の七百四十三件と、増加率は五カ月続けて二桁となり、リーマンショック後の四カ月連続を超えました。また、雇用についても、最悪の場合、リーマンショックを超える、全国で約三百一万人が失業するおそれがあるとの試算もあります。
 現在は、危機の真っただ中にあるといえ、金融市場の混乱や国内を代表する企業の倒産発生など、さまざまなリスクに備えた公金管理が必要な状況にあるといえます。
 そこで、このような厳しい状況における令和二年度の公金管理計画はどのような考え方で策定され、何をポイントとされているのか伺います。

副島管理部長オリンピック・パラリンピック調整担当部長兼務

令和二年度公金管理計画では、基本的な考え方といたしまして、新型コロナウイルス感染症拡大による内外経済の不確実性の高まりと、それに伴う金融資本市場の変動拡大が、金融機関等に与える影響を注視する必要性を掲げております。その上で、公金管理に当たりましては、社会経済動向や金融情勢の先行きに特段の注意を払いつつ、迅速かつ的確なリスク対応を行いながら、安全性を最重視し流動性を十分に確保した上で、柔軟かつ効率的な保管、運用を目指すとしております。
 ポイントといたしましては、地方法人課税の見直しや法人二税の減収による都税収入の落ち込みなどにより、歳計現金等の平均残高見込みが前年度実績見込み比で約五千百億円減少している点が挙げられます。

大津委員

今年度は、日々の支払いに充てるための資金である、お財布ともいえる歳計現金等の平均残高が大きく減少するとのことですが、都は、本計画策定後に大規模な補正予算の編成も行っています。また、コロナ禍の影響による景気の落ち込みもあり、歳計現金等の収支見通しも例年とは大きく異なることが想定されます。地元でも、ほとんど、資金繰りで困っている人たちの最も多い原因は、テナント料、家賃、賃貸部分が大きく重たくのしかかっております。
 そこで、新型コロナウイルス感染症拡大が日々の資金繰り等へ与える影響についてお伺いします。

副島管理部長オリンピック・パラリンピック調整担当部長兼務

まず、収入面におきましては、さらなる都税収入の減収、納付期限延長に伴う収入計上のおくれが想定されます。
 一方、支出面につきましては、新型コロナウイルス感染症対策に伴う事業費の増加が見込まれます。
 このような収入の減少と支出の増加に伴いまして、歳計現金等の平均残高は、昨年度から大幅に低下した計画策定時点の想定から、さらに大きく減少する可能性がございます。

大津委員

ただいま歳計現金等の平均残高がさらに減少する可能性があるという話がありましたが、歳計現金等が不足をし、約束した支払いが滞るような事態が起こることがあってはならないのはもちろんのことであります。
 そこで、今年度の歳計現金等の流動性確保にどのように対応していくのか伺います。

副島管理部長オリンピック・パラリンピック調整担当部長兼務

歳計現金等につきましては、例年、出納閉鎖前後の資金不足時には、基金からの一時的な繰りかえ運用により支払い残高を確保する対応をとっております。
 本年も、五月三十一日を挟む期間におきまして、基金からの繰りかえ運用を行っているところでございますが、現時点で昨年よりも繰りかえの金額を増額するとともに、期間を長めに設定いたしまして万全を期しているというところでございます。
 今後、六月中旬以降に残高がマイナスとなる可能性が生じた場合にも、同様に、一時的な繰りかえ運用を活用して対処し、日々の残高管理においても、万が一に備え、決済性預金を手厚く措置する方針でございます。

大津委員

歳計現金等の流動性を十分に確保し、資金繰りに万全を期している、非常に細かく地道な、さまざまな日々の作業を確認させていただきました。
 今回の新型コロナウイルス感染症拡大への対策としては、都は、感染防止と経済社会活動の両立に向けた取り組みを進め、国は二度にわたる補正予算編成を行い、経済活動を下支えする姿勢を示しています。公金管理においても、今後景気がV字回復すれば問題はないものの、感染症終息までの道のりが長引き、景気がL字型で長期にわたって低迷する状態も想定することは必要だと私は考えています。
 今までも、長きにわたり、この関東大震災、世界恐慌、高度経済成長、オイルショック、バブルの崩壊、山一證券破綻、リーマンショック、そして東日本大震災、そして、このコロナ禍と来ておりますが、最後に、今回のコロナ禍を踏まえた今後の公金管理の基本的な考えについて、佐藤局長にお伺いします。

佐藤会計管理局長

今後の国内景気につきましては、四月に発行されました日銀の展望リポートでは、感染症拡大の影響が、ことし後半にかけて和らぐことを前提に、来年度以降の回復を見込んではいるものの、不確実性は極めて高いとしております。
 また、今回の新型コロナウイルス感染症による経済不況は、リーマンショック時を既に超え、およそ九十年前の世界恐慌にも匹敵する規模との報道もございます。
 こうした未曽有の状況下におきましては、公金の安全性の確保はもとより、今後想定される経常的な収入の減少と大規模な支出に耐え得るだけの手元資金を常に保持しておくことが重要と考えております。そのため、各局との連携により、大口の収入や支出を的確に把握するとともに、流動性預金の残高にも細心の注意を払うなど、一層緻密な資金管理を行ってまいります。
 今後、公金管理を取り巻く環境がどのように変化しようとも、公金を預かる者の責務として、安全性の最重要視はもちろんのこと、都民や事業者に対する、迅速かつ的確な支払いを確実なものとする流動性の確保にも全力を挙げてまいります。

大津委員

これまでも都では、ペイオフの全面導入、リーマンショック、日銀のマイナス金利導入など、経済金融環境が激変するような局面が何度もあり、公金の元本を毀損することなく安全に保管、運用をつくってまいりました。今回の未曽有の状況においても、これまでの経験や知見を生かし、特に公金の安全性と流動性をしっかりと確保していくことを改めて期待いたしまして、質問を終わらせていただきます。