大津ひろ子の東京都議会発言
大津委員
東京都の財政収支の長期推計について伺います。
東京都の財政収支の長期推計というのは、都財政運営の方向性を示す指針でもあり、石原都政、平成十八年に財政運営の指針が出て以来初めて年末公表されました。
平成時代の三十年は災害の年でもあり、阪神・淡路大震災、東日本大震災、熊本地震、全国各地で自然災害が発生をしました。加えて、バブル崩壊、ITバブル崩壊、そしてリーマンショックなどの大不況も発生をした、そうした平成の時代でもありました。そして、令和に入り、新型コロナウイルス感染症が世界的に伝播が広がっています。
これまで都は、感染対策として令和元年度と二年度を合わせ四百一億円規模の補正予算や、今月十二日に発表された百十一億円規模の緊急対応策などにより、当面の緊急対応や将来の事態の備えを実施することで感染拡大の抑制の実効性を高める取り組みなどを進めています。
これらの緊急的な財政需要とともに、二〇二五年をピークに減少に転じる都内人口に加え、本格的な少子高齢化社会への突入による労働力不足や生産性の停滞、そして、常に忘れてはならない気候変動による温暖化の進行による社会現象、そして公衆衛生の対応といった避けることのできない財政需要など、今後の都財政は、歳入と歳出のバランスが保てるのか将来に不安を感じるところでもあります。
中長期的な視点では、昨年末に示された未来の東京戦略ビジョンで掲げているように、人が輝く東京を実現し、東京が成熟都市としてさらに成長を遂げていくことが必要と考えます。
財政収支の長期推計は、戦略ビジョンと同じく公表されましたが、二〇四〇年までの二十年間の財政収支を推計する長期推計は、どのような狙いで策定をしているのかお伺いいたします。
山田主計部長
財政収支の長期推計でございますけれども、未来の東京戦略ビジョンで描く政策の実行について財政面からの考察を行うため、また、中長期的な都財政の見通しをもとに、計画的かつ戦略的な財政運営を行っていくために作成、公表したものでございます。
推計に当たりましては、未来の東京戦略ビジョンと同一の人口フレームや高齢化などの客観的なデータを用いながら、経済成長率について上位、中位、下位の三つのシナリオを設定し、都の歳入と歳出の全体の推計を行うことで二十年間の収支ギャップの推計を行っており、これまでの都の財政運営や現在の都財政の状況、今後起こり得る環境変化を踏まえた中長期的な推計となっているところでございます。
こうしたことから、本推計は、新たな政策を行っていく上でのベースとなる、いわば現在の都財政の実力を示すものとなっていると考えております。
大津委員
この長期推計は、現在の都財政の実力、実寸大をあらわしているということが理解はできました。
将来の財政需要に備えて弾力的な財政運営を行い、持続可能な都市東京とするために、この長期推計を財政運営の方向を示す指針として備え、未然予防なども考慮しながら、予算の編成、執行を進めていかなくてはなりません。
長期推計を踏まえて、都財政の特徴をどのように捉えて、どのような分析結果が得られたのか伺います。
山田主計部長
都財政は、歳入に占める法人二税の割合が高く、景気変動の影響を受けやすい不安定な構造にあります。
現に、平成の三十年間における都の法人二税は、景気変動の影響を受け、大きな下降局面が二回発生しており、リーマンショックの際には、一年間で約一兆円もの税収減となるなど大きく変動しております。
こうしたことから、中長期的な財政収支の推計に当たりましては、景気変動に伴う短期的なぶれを調整するため、法人二税は、平均税収額を推計の起点とし、上下の振れ幅の中間を通る考え方の推計を行ったところでございます。
このような考え方のもとで推計を行った結果、労働参加と生産性向上が一定程度進むケースであり、経済成長率を期間平均〇・四%としている中位推計であっても、超高齢化社会への対応など、将来にわたり膨大な財政需要を抱える中で、二〇三二年度以降、歳入と歳出の差である収支ギャップのマイナス幅が拡大し、二〇四〇年度には一千三百億円のマイナスとなる見込みであります。同様に、上位推計の場合の二〇四〇年度の収支ギャップは一千二百億円のプラス、下位推計の場合は三千七百億円のマイナスとなります。
中位推計の場合、今後二十年程度は、基金の取り崩しを行うことなどによりまして対応可能でございますが、その後は、基金の活用に加え、厳しい歳出の精査や、これまで抑制してきた都債の発行額の増加が必要となるなど、長期的に見た都財政は決して楽観はできない見通しであると考えております。
大津委員
これまでにも、都税は、恵まれてきた時期もありましたし、危機の時期もありましたが、中長期的には決して楽観視できる状況にはないとの推計結果が出ました。
先ほどの答弁にもありました都税収入についてですが、過去にはやはり、バブル経済の崩壊やさまざまな、リーマンショックなどもありました。例えば、平成二十年度のリーマンショックのときには、わずか一年で都税収入が一八・八%も減収しました。平成三年のバブル崩壊のときには、平成三年から六年のその三カ年で合計二〇・四%の都税が減収をされました。
ことしは、新型コロナウイルス感染症が世界的に拡大し、経済、産業に影響も出、景気の停滞、そして都税収入へのどのくらいの減収になるかは、まだ想定できませんけれども、大きな懸念がされているところでもあります。
今後、健全な財政運営を行いながら、積極果敢な施策展開を行う必要があると考えますが、武市局長の見解をお伺いいたします。
武市財務局長
本格的な少子高齢、人口減少社会の到来、激動する世界経済など、都財政を取り巻く状況は大きく変化をしております。また、足元におきましても、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う経済の先行き不安により、その不確実さはさらに高まっております。
こうした中におきましても、必要な対策を時期を逸することなく講じていくとともに、東京のさらなる進化に向けて未来の東京戦略ビジョンで描く施策を着実に推進していくためには、施策の積極的な展開を支え得る財政基盤の構築が不可欠であります。
このため、施策の新陳代謝を図る事業評価の取り組みをさらに深化させ、無駄の排除を徹底するとともに、都債と基金の活用を図るなど、計画的かつ戦略的な財政運営を行っていく必要がございます。
その上で、稼ぐ東京、イノベーションの活性化、誰もが輝く働き方の実現など、未来への投資を行うことで成長が財源を生み、さらなる政策へとつながる好循環を生み出していくこと、それが求められております。
財政運営に携わる者といたしまして、中長期的視点に立つことは重要でございます。
今般策定いたしました長期推計も踏まえまして、今後とも、さらに強固で弾力的な財政基盤を構築し、都民の安全・安心を確保するとともに、東京、日本の明るい未来をつくり上げる積極的な施策の展開を、財政面からしっかりと後押ししていく所存でございます。
大津委員
財源の確保に向け、将来世代への負担につながる都債の活用の前に、財政の力を意識したさまざまな無駄の排除の徹底や取り組みや基金の活用に取り組んでいただくことをお願いいたします。
次に、仮称都民の城について伺います。
中間のまとめを十一月に発表し、パブリックコメントや都議会、さまざまなところからの都民の声、議論などを経て、このほど改修基本計画が策定をされました。特定の誰かのためではない、みんなのための施設、誰ひとりとり残すことなく使える、そういう施設は、私どもも共感できるものだと思っております。
パブリックコメントを二度にわたり実施し、その中には、地元の声も確実に入ってきていると思いますが、期待を寄せる都民の声にしっかりと耳を傾けながら、手続面においても丁寧に進めてきたと思っています。
この計画については、一部報道でクローズアップをされたのは、都民の城の内容というよりも、周辺都有地とあわせた一体となった土地の活用について、最短で令和十一年を目指すという部分が、まるで十一年に解体することが決まったかのような報道のされ方をしましたが、そうした向きには疑問を感じざるを得ません。
そこでまず、確認ですが、改修基本計画に示された周辺都有地との一体的活用を目指す時期を、最短で令和十一年とすることについて、先ほども答弁もありましたけれども、重ねて都の見解を伺います。
五十嵐財産運用部長
本件地は、青山通りに面し、都のさまざまな政策実現にも資する可能性を有しておりまして、将来的には、周辺都有地とあわせ、一体となった土地として活用していくことを目指していく必要があると考えております。そうした認識のもと、一体活用を目指す最短の時期として、国連大学との契約が更新期を迎える令和十一年としたものでございます。
周辺都有地とあわせた一体的活用については、今後、有識者検討会を立ち上げ、その活用案を検討していくこととしており、その検討の過程で既存建物の取り扱いを定めていくことから、現時点で、令和十一年に、仮称都民の城の建物を解体するということを決定したものではございません。
大津委員
あくまで、まずは最短の目標としての節目が契約更新にもなっている、その令和十一年というタイミングを挙げているということで確認をしました。
この周辺の都有地は、こどもの城跡地、そして隣地の青山病院跡地とコスモス青山と国連大学底地と合わせて四・五ヘクタールもの広大な都有地となっており、これは東京の未来の象徴にもなるべきエリアであると考えます。湧水、池、緑、桜、自然環境も青山病院跡地には保護され、品格と文化性を尊重するとともに、子供たちの育成にも深くかかわってきた土地柄でもあります。
そして、このエリアの中には、全ての都政の政策が埋め込まれています。例えば、女性政策という点ではウィメンズプラザがあります。そして、国際、世界というテーマでは国連大学があり、SDGsもこの国連でつくったものであります。また、子供というテーマ、文化芸術の発信ということで、こどもの城跡地がありますし、青山病院跡地は、先ほど述べました自然、土地、土を、この都会の中にあって土を広く有しているところでもあります。
そういうことで、周辺都有地との利用者との協議や都民の城の活用状況などによっても、そうした利用者の声や都民の声、地元の声にもしっかりと耳を傾けながら慎重に議論をしていっていただく方向でお願いをしたいと思います。
今回の改修基本計画策定に当たって、二度にわたりましてパブコメを行い、約三百九十件ほどの意見があったということも、この都民の城に対してのさまざまな期待の大きさを物語っているところでもありますし、地元としても物すごい大きな期待と課題を抱えて盛り上がっているところでもあります。
そこで、今回二度のパブリックコメントを行った結果と、それを受けた最終的な基本計画でどのような変更を加えたのか伺います。
五十嵐財産運用部長
パブリックコメントにつきましては、都として、改修計画の考え方を示し、広く都民のご意見を伺うため、中間のまとめの段階からパブリックコメントを行うことといたしました。一回目は、概算経費を示しておりませんでしたが、工事費を算出できた段階で、二回目を追加で実施したところでございます。
最終的に三百八十九件のご意見を頂戴し、そのうち七割程度が劇場に関する意見で、かつての青山劇場、円形劇場の復活を望む声が一番多く、また、子供のための機能を望む声が多く見られたという結果でございました。
多くの意見があった劇場については、改めて改修内容とコストのバランスを考慮した結果、床機構の改修は見送ることといたしましたが、現施設を生かし、既存の構造を可能な限り残すことを明記し、かつての劇場と比べれば機能面で一定の制約はあるものの、演劇を初め、さまざまな芸術文化活動にお使いいただけるものとしていくことといたしました。
また、施設利用イメージに対するご意見として、子供のための機能を初め、さまざまなご提案もあり、こうしたことについては、今後、事業内容の詳細について検討を本格化させていく中で参考とさせていただき、都民の城で提供する事業の充実を図ってまいります。
そのほか、現在、仮称である都民の城の名称に関するご意見もあったことを踏まえまして、名称に関する検討や決定を今後行うことを明記いたしました。
大津委員
パブリックコメントを初め、さまざまな都民からのアイデア、意見、話、そうした声を聞くことで、行政の意思形成過程を公表し、意見をいただき、都民の都政参加、都政の透明性向上を図ることを目的とし、これからもこうしたプロセス等を経て都民の参加が促され、健全な政策形成過程がとられていくことをお願いいたします。
多くの意見があった劇場に関してですけれども、青山劇場、円形劇場に関しましては、昭和六十年の開館なので相当老朽化をしているとともに、国が閉館をして五年間そのままになっていましたので、床下、配管、特に床の機構が非常にさびついたり腐食をしておりました。この床の機構が、実は、本当はせり上がったり、横舞台移動の早がわりがあったり、非常に文化芸術としての拠点でもある劇場として誇るところでもありましたけれども、いざ、この改修に関しては特注部品や特別仕様になり相当高額になるということだったので、床機能については諦めましたけれども、この青山劇場、円形劇場としては、今後も撤去をされず施設空間がそのまま残る、これは非常に大きな意義のあることであります。
そういった意味では、こうした歴史に残る劇場でありましたので、青山劇場、円形劇場という名前がどこかしらに残ることを望みます。といいますのは、この青山劇場、円形劇場が仮称都民ホールというふうになっている段階で、会議室になってしまうのか、何かパイプ椅子と会議机が並んでしまうのかという誤解を相当呼び起こしますので、これはあくまでも仮称なので、今後検討する中で、青山劇場、円形劇場という歴史に残る名前が残っていくことを期待したいと思います。
同じく、仮称都民の城についてですけれども、これについてもさまざま検討していく中で、この近隣であります渋谷駅周辺では、大開発が百年に一度といって進んでいますけれども、実は、次々大規模ビルが、名称としては、キャスト、ストリーム、旧東急プラザはフクラス、そして、今渋谷駅のスクランブルスクエアと、全て横文字といいますか、地元でも、ほら、あれなんだっけ、あの、ほらといってビルの名称が出てこない状況になっておりまして、命名というのは非常に意義も含めて重要だと思いまして、仮称都民の城を正式に考えるときには、なるべく日本語の文字も入れることを要望します。
今回、寄せられましたたくさんの都民の声、今後の検討の中でも生かされていく余地がありますし、そうした都民の声、また地元の声、そして一千四百万人都民、誰しもが有意義に使える城ということで、引き続きしっかりと耳を傾けて検討を進めていっていただきたいと思います。終わります。