大津ひろ子の東京都議会発言
大津委員
主税局ビジョン二〇三〇について伺います。
ビジョンでは、令和八年度までに税務基幹システムの再構築を行い、税務行政のデジタル化により、納税者の利便性の向上を図るとしています。デジタル化の波は、生活面に急速に広がっており、国も推進しているところですが、デジタル化の長所、短所と、顔と顔のわかる対面業務の長所、短所の両面の長所を生かしていくことで、納税者がそれぞれ誰ひとり取り残されずに便利になったと実感してもらえることが重要です。
そこで、主税局の目指す税務行政のデジタル化は、例えば、シニア層にとってどのようなメリットがあるのか伺います。
大久保総務部長オリンピック・パラリンピック調整担当部長兼務
デジタル化が進んだ税務行政の目指す姿でございます。税務に係る相談や手続を行うに際し、そもそも窓口に出向くこと自体が不要となる仕組みの実現と考えてございます。
例えば、来年度から開始するチャットボットは、二十四時間三百六十五日、自宅にいながら税に関する問い合わせができる仕組みでございます。また、スマートフォン等によって納税できる仕組みも来年度中にスタートをいたします。
このように、税務行政のデジタル化は、高齢者を含むあらゆる納税者に対して税務情報や手続がバリアフリー化するメリットを提供するものと考えてございます。
大津委員
デジタル化についてはやはりわかりやすいこと、納税するための操作や、やり方がわかりやすいことが肝心であります。今後、デジタル化の説明、宣伝においては、相当のわかりやすい親切な説明、宣伝が必要となっていくと思います。
都税の納付方法についての平成三十年度についての比率を見てみました。例えば、対象税目の差はありますけれども、一位が三二・七%を占めるのは金融機関の窓口、二位の二九・一%を占めるのもコンビニでの現金払いでもあります。わかりやすく簡単に、いつでも、どこもという、こうした機能、これらもちゃんと検討をデジタル化の中にも入れていくことが大切かと思います。
例えば、デジタル化がキャッシュレス納税に代表されるように、パソコンやスマートフォンを使った利便性の向上を前提としている場合には、例えば、スマホ、パソコン、キャッシュレスにどうしてもなじめない層やシニア層、また、チャットボット、もう言葉もわからない、面倒くさいと思うような人たちもたくさん多く、そして、更新も激しい情報機器を次々に買っていられないという層も多いかと思います。
パソコンやスマートフォンの取り扱いにふなれであったり、そもそもそういった情報機器を持っていなかったりという、いわゆるデジタルになじめない人たちへの対応について、都はどのように考えているのか、所見を伺います。
大久保総務部長オリンピック・パラリンピック調整担当部長兼務
ご指摘のとおり、社会全体がどれだけデジタル化し、利便性が向上したといたしましても、デジタル機器の利用が困難な納税者の方々が一定程度いらっしゃることにしっかりと対応していくことが重要でございます。
デジタル化の実現後も、あらゆる納税者に対する窓口での納税相談につきましては、着実に実施できる体制を整えてまいります。
また、デジタルによる申告や納税をしたいが方法がわからないといった納税者の方々に対しましても、窓口における必要な助言を丁寧に行うなど、個別のサポートを強化してまいりたいと考えております。
大津委員
それでは、現場を見てみたいと思います。
納税者が都税事務所の窓口を訪れる理由は多種多様で、そんなに詳しい納税者がいっぱいいるわけではなく、さまざまわからない点も抱えながらの訪問と思います。個別の税に関する相談やわかりやすい税の説明などは、やはり人と人との対面で話すことも求められています。
そこで、地元でもあります渋谷都税事務所、ここは渋谷区役所の中にありましたが、今は恵比寿ガーデンに移転しているものの、現在、どのような目的で、どのくらいの納税者の方々が窓口に訪れているのか、現場の実態を伺います。
大久保総務部長オリンピック・パラリンピック調整担当部長兼務
渋谷都税事務所の事業税部門でございますけれども、法人事業税の申告や自動車税の減免申請などで、多い日には、およそでございますが、百名程度の方が訪れておられます。単なる申告書、申請書の提出にとどまらず、書類の記載方法などの相談も受けているところでございます。
資産税部門でございますけれども、固定資産評価証明書の申請や土地家屋など資産の評価に関するご相談など、多い日にはおおよそ三百人程度の方が訪れております。
また、徴収部門でございます。納税証明書の申請や納税に関する相談のため、多い日にはおよそ百名程度の方が訪れておられます。
ご指摘のとおり、都税事務所の窓口に訪れる方々は、職員からのわかりやすい説明や個別具体的な相談を望まれる方が多く、引き続き丁寧な対応が必要であると考えているところでございます。
大津委員
想像以上に来訪者の数は活況を帯びていると感じます。
昨今、銀行なども次々と窓口を閉鎖し、ATMだけを残すところも見受けられます。また、地元の渋谷でも、昨年の四月から一部の出張所の窓口業務を閉鎖し、自動証明書交付機による対応に切りかえたところもありました。
自動証明書交付機ではマイナンバーカードがないと発行できず、マイナンバーの紙の通知書ではだめで、カードじゃないとだめだということで、窓口業務のところはマイナンバーカードがなくても申し込み手続ができると。したがって、自動証明書交付機にしても、やはり職員の方に教えてもらわないとわからない、いろいろな声が上がってきているところでもあります。
デジタル化をコストカットと考えるのではなく、そもそも全ての都民にとって何が便利なのかをよく考えてみる、そうした行政サービスの原点でもあります都民生活の優しい向上が視点として重要であります。
例えば、引っ越しの際、手続を考えますと、区役所、都税事務所、年金事務所にそれぞれ住所変更する必要もあり、こうした煩雑な手続、行政の縦割りにより、都民に手間をとらせてしまいがちになっていたものはどんどんデジタル化を進めるべきと考えますが、見解を伺います。
大久保総務部長オリンピック・パラリンピック調整担当部長兼務
税務行政のデジタル化におきましては、申告や納税といった納税者の方が行う手続のデジタル化だけではなく、国、地方自治体、民間企業等との電子的な外部連携、いわゆるバックオフィス連携の実現を目指してございます。このバックオフィス連携によりまして、各種の申請時における添付書類の省略が可能となります。
また、住所変更等の届け出など、それぞれの窓口ごとに必要となっている手続が一度で済むようになる、いわゆるワンスオンリーが実現いたします。こうした添付資料の軽減や手続の簡素化などによりまして、デジタルに弱い方々も含め全ての納税者の利便性向上を目指してまいります。
大津委員
デジタル化の推進により、デジタルになじめない方たちの利便性向上を図っていくことも煩雑化の手続解消などによりできることだとも考えます。
デジタル化が、お年寄りや、そうした情報機器を所有していない方たちを置き去りにするようなことがあってはなりません。税務を初め行政は、つまるところ人と人との信頼関係によって成り立っており、そのためにも、職員一人一人が今以上にプロ意識を持って納税者に納税をしていただくという気持ちで向き合うことが必要です。
そこで、デジタル化を進めることによって、窓口サービスが低下することのないよう、所見を伺います。
大久保総務部長オリンピック・パラリンピック調整担当部長兼務
主税局ビジョン二〇三〇では、税務基幹システムを再構築することによりまして、システムで可能な業務はシステムに任せるようにすることを目指しております。
これによりまして、限られた人材を、窓口における相談など人にしかできない業務に重点配置し、丁寧な窓口サービスを行っていくことによりまして納税者の信頼確保に努めてまいります。
大津委員
主税局も今まで長年力を入れてきました人材教育、それらを継続、発展させながら、そして税に対する納税者の理解を得るために、デジタル弱者はもとより、全ての納税者に対して、誰ひとり取り残さない対応ができる窓口業務体制を構築していくことが不可欠であります。
これらのことを踏まえ、今後、納税者に対してどのように向き合っていくのか、塩見局長の決意をお伺いいたします。
塩見主税局長
主税局ビジョン二〇三〇は、税務行政のあるべき将来像として、納税者の利便性が向上し、社会構造の変化に対応した執行体制が構築された姿を示した上で、その実現に向けた方策としてデジタル化を推進していくこととしたものでございますが、当然にして、今お話がありましたように、納税者との信頼関係を前提としたものだというふうに考えてございます。
また、人材育成というお話もございましたが、こうした税務手続や事務のデジタル化を進めていくに当たりましては、その先にある税務の仕事のあり方そのものにつきまして、局の職員一人一人が高い意識といいますか、その自覚を持って、みずからの仕事を効率的で生産性の高いものに改善していくという、そういった取り組みが非常に大切であるというふうに考えてございます。
持続可能な都市東京の実現に向けましては、正確で公平な課税、徴収による安定した税収の確保が大変で重要でありますが、何といっても税に対する納税者の理解が不可欠であるというふうに思います。
この理解を得るためにも、仕事の質と効率性を高める上で、個々の納税者の実情に応じた相談など、税務のプロフェッショナルとして、人にしかできない業務に十分に対応可能な執行体制を構築し、お話にありましたようなデジタルになじめない方々などを含めまして、一人一人の皆様にきめ細かく丁寧に対応してまいる決意でございます。