大津ひろ子の東京都議会発言
大津委員
デフレからの脱却と持続的な経済成長実現のため、日本銀行が大胆な金融緩和政策を平成二十五年に実施してから、七年近くがたとうとしています。
私は、この金融緩和の開始時期からちょうど四年間、財政委員会に所属をしておりまして、マイナス金利政策を初めとする未曽有の金融緩和政策の導入と、それに伴う激動の金融市場を目の当たりにしてまいりました。
このたび、再び財政委員会の委員となり、改めて現状を確認しましたが、都の公金管理を取り巻く金融環境は、さらに厳しくなってきたのではないかと感じております。
日経平均株価こそ二万円台前半へと回復したものの、消費者物価の伸びはいまだにゼロ%台と、目標とされる二%には届かず、九月には長期の利回り指標である十年国債利回りが過去最低レベルまで低下するなど、デフレ脱却にはほど遠い状況に思えます。また、本年十月の消費税率引き上げの影響も今後懸念されるところです。
こうした中、都の公金の主な預け先である金融機関の経営状況は、超低金利に伴う利ざや縮小のため、三菱、三井、みずほなどのメガバンクを含め大変厳しく、特に地方銀行においてはその傾向が顕著との報道もなされております。
東京都の公金管理は、安全性、流動性、効率性の確保が原則とされてきましたが、公金は都民の貴重な血税、税金でもあり、何よりも安全性が最重要視されることを認識しております。
そこでまず、こうした厳しい金融情勢下における、公金の安全性を確保するための取り組みについてお伺いします。
大久保総務部長オリンピック・パラリンピック調整担当部長兼務
都の公金管理につきましては、委員お話しのように、安全性、流動性、効率性の確保という三つの原則に沿った保管、運用に努めておりまして、特に、最重要視する安全性の確保におきましては、預金先金融機関や都が保有する債券の発行体における経営の健全性に十分留意する必要がございます。
まず、預金につきましては、預金先となっている金融機関の経営の健全性を分析するため、金融庁に登録されている複数の格付機関が付与した格付を初め、自己資本比率や収益性などを組み合わせた基準を設定し、この水準を上回ると判断した金融機関のみを預金先としております。
一方、債券につきましては、運用対象を、国債を初めとする極めて安全性の高い機関が発行する債券に限定した上で購入しております。
その上で、預金先金融機関や債券発行体の経営状況に応じて、金額や期間などに制限を設けているほか、日常的に金融機関等の格付や社債の利回り等を監視し、経営状況の変化の兆候を早期に察知できるように努めております。
大津委員
安全性重視でお願いしたいと思います。
過去、舛添知事のときに、収益性をアップするために株式投資はどうかと知事が言及したときがありました。結果、しないで済みましたけれども、公金の株式投資は、非常に安全性の面からも危険性が伴います。
従来の延長線上にはない厳しい金融情勢においては、的確な公金管理のため、適時適切な状況把握や正確な判断が求められるところです。また、非常に細かく専門性の高い分野でもあることから、相応の管理体制のもとで業務を適切に執行する必要があると考えます。
そこで、安全性を確保するための、こうした動きに的確に対応するための、現在の公金管理にかかわる組織体制について確認をし、お伺いしたいと思います。
大久保総務部長オリンピック・パラリンピック調整担当部長兼務
現在、公金管理課におきましては、キャリア活用制度で採用された、専門的知識やスキルを有する職員が複数在籍しているほか、現役の金融機関在籍者を特定任期つき職員として配置しておりまして、金融分野の最前線の知識や実践的なスキルを活用、共有できる体制となっております。
また、外部の専門助言員から、金融機関の経営分析等に必要となる情報や助言を受けるとともに、分析の結果等については、金融分野の専門家等で構成される東京都公金管理アドバイザリー会議に諮り、委員の豊富な経験や識見を取り入れながら、金融情勢などに応じた的確な判断、対応を行っております。
これらを有効に活用し、金融情勢の動向や金融機関を初めとする公金運用先の経営状況をきめ細かく把握して対応することにより、公金の安全性の確保に万全を期しております。
大津委員
専門的知識を有する人材を活用した管理体制ということで、また、さまざまな研究、検討をしながら安全性、そして組織体制をこれからもしっかりとやっていっていただきたいと思います。
一方、マイナス金利という、資金を管理、運用する立場からいえば非常に厳しい環境が続いていますが、このような環境下にあっても可能な範囲で効率性、つまり収益や利回りをさらに上げる、そういった努力も重要であります。
例えば、一兆円を利回り〇・〇〇一%で一年間運用した場合の利息収入を計算してみると一千万になるわけで、じゃあ利回りが〇・〇〇四%だと四千万、じゃあ〇・〇一%だと一億円ということになりますので、大きな金額だと、この利息収入も相当変わってくるわけです。
そこで、安全性を確保しつつもマイナス利回りを回避し、効率性も確保するに当たり、どのような運用方針をとっているのか、またどんな工夫をしているのか、あわせて所見を伺います。
大久保総務部長オリンピック・パラリンピック調整担当部長兼務
まず、預金での運用につきましては、資金需要の低迷から、金融機関の預金受け入れスタンスが非常に消極的である中、預け入れ期間や金額など、金融機関の個別ニーズをしっかりとヒアリングし、運用のマッチングに努めるなど、きめ細かい対応を行っております。
一方で、債券での運用につきましては、長期金利の指標となる日本国債十年物の利回りがいまだマイナス圏で推移していることから、国債や政府保証債と同等の信用力を有し、比較的利回りの見込める地方債や財投機関債での運用に重点を置いております。
あわせて、運用効率をさらに高めるために、預金に比べ相対的に利回りの高い債券での運用割合を引き上げるなど、機動的にポートフォリオの最適化を図ることにより、安全性を確保した上で、柔軟かつ効率的な運用を行っています。
大津委員
先日も財政委員会がありまして、その報告によりますと、都税収入の増加等により、令和元年度上半期の公金全体の平均残高は六兆三千二百二十一億円と、対前年同期比で四千二百十六億円が増加しているところでもあります。
マイナス金利という歴史的低水準の市場金利の中で、公金の運用先の確保と安全性が強く求められる状況下、六兆円余りの金額を預かる責任は重いものもあります。都民、そして将来世代のために、適切に管理、運用をしていっていただきたいと存じます。
さて、国内においては、当面、日銀による金融緩和政策は継続をされ、国内金利は引き続きマイナス圏を推移すると予想されます。
一方、海外動向に目を転じますと、トランプ政権の政策動向次第で、世界中の株式や為替などが、金融資本市場が、日々目まぐるしく変動しています。
そこで最後に、このような環境の中で、公金管理を取り巻く金融市場の環境についてどんな認識をされているか、また、今後の公金管理の方向性について、局長に所見を伺って、質問を終わりにしたいと思います。
佐藤会計管理局長
委員のお話にありましたように、十月に行われました日銀の金融政策決定会合におきましては、現行の大規模な金融緩和政策を維持、継続する考えが示され、同時に黒田総裁より、追加金融緩和について示唆する発言もございました。また、本日発表された、いわゆる日銀短観によりますと、大企業の景況感が四期連続の悪化となっておりまして、今後も、金利は極めて低い水準で推移していく見通しでございます。
また、国外に目を向けますと、これまで継続的に利上げを実施してきました米国が七月より利下げに転じ、昨日には二〇二〇年の金利据え置きを示唆したほか、欧州では九月に三年ぶりの利下げを実施、さらに中国におきましても金融当局が緩和に踏み切るなど、各国とも景気減速リスクに対応すべく金融施策を展開してございます。
このような中、国際通貨基金は、十月に二〇一九年の世界経済見通しを引き下げておりまして、日銀も十月の展望レポートで、海外経済の回復時期が従来想定よりもおくれるとの見方を示してございます。
これらの点から、現在の金融市場の環境は、過去の経験則が通用しづらい、極めて不透明な金融環境にあると申せまして、さまざまなシナリオを想定し、あらゆるリスクに備えることが極めて重要と考えてございます。
こうした認識のもと、今後は、これまで以上に内外の経済金融情勢や公金預け先の経営情報を適時適切に収集、分析をし、変化の激しい金融環境に対して柔軟かつ機動的に対応することで、安全性と効率性の両立という難度の高い課題の克服に向け、局一丸となって取り組んでまいります。