大津ひろ子の東京都議会発言

大津委員

都政には、防犯、防災、福祉、環境等、都民の命と安全を守るあらゆる東京都政策があり、その原資は税金で行っているものです。都民一人一人から納税された血税が財源であります。
 私からは、主税局における人材教育についてお伺いをいたします。
 主税局は、公平、適正な納税秩序の維持とともに、歳入所管局として、都税収入の確実な確保、高い徴収率の実現が求められているところでもあります。ここ数年、徴収率は上昇を続け、平成三十年度決算では九九・一%と過去最高を更新しました。
 以前、平成七年度までさかのぼりますと、徴収率約九〇%、滞納繰越額は約二千四百億円と苦しい時代もございました。こうしたときに主税局は、組織風土の抜本的な転換、構造改革推進、一人一人の能力向上を図ってきたと聞いておりますけれども、こうした結果、そうした状況を改善し、結果的に昨年度決算では徴収率九九・一%という成果を出し、全国の中でも順位が上がってきたということは、現場の皆様の地道な活動を高く評価したいと思います。

 税務にかかわる職員には、高度な専門性と専門知識や課税実務を身につけることを求められ、加えて、進行管理、人事管理、管理監督者に必要な能力のほか、ICT活用をする力、そして人権意識やコンプライアンス意識の醸成など、多角的な視点を踏まえた育成も重要であると考えます。
 まず、主税局では、どのような職員像を描いて、具体的にどのように人材育成に取り組んでいるのかを伺います。

大久保総務部長オリンピック・パラリンピック調整担当部長兼務

主税局が歳入局としての使命を果たすためには、税務という極めて専門性の高い職務におきまして、現場を担うことができる人づくりが最重要の課題と認識しております。
 主税局が独自で策定している主税局人材育成方針では、税務のプロとして高い気概と専門性をあわせ持ち、適正、公平な賦課徴収を実現できる職員を求められる職員像としております。
 人材育成の一つである研修につきましては、毎年度、主税局研修実施計画を策定しておりまして、その体系は実務研修、職層研修、課題研修の三つの区分に分類され、実務研修は、税務のプロを育成するために、各税目の専門知識、技術を習得させるものでございます。新任職員から中堅職員まで段階的な育成を図るため、基礎科、応用科などのコースを設定して実施をしております。
 次に、職層研修は、課長代理級職員、主任級職員など、各職層に求められる役割と責務を果たすために必要となる知識を習得させるものでございまして、管理監督者を対象としたマネジメント研修や、若手職員を対象とした問題解決力強化研修などを実施しております。
 最後に、課題研修は、職員に必要な基本的知識などを習得させるもので、ICT基礎力向上研修、公務員としての規範意識等倫理感を養うコンプライアンス研修を初め、主税局の約半数を占める女性職員の活躍も後押しするライフワークバランス実践研修などを実施しております。
 これらの実施に当たりましては、座学といわれる講義だけではなく、グループでのディスカッション、ロールプレーイングに加え、現場視察や調査を取り入れることによりまして、研修効果の向上に取り組んでおります。

大津委員

都政を取り巻く社会情勢は大きく変化もしてきています。今後とも、専門知識のみならず、こうした社会情勢の勉強、そして研修の中では、ほかの局の事務事業、事務内容の最新動向などを知ることのできる研修も必要かと思います。税の使われ方を知ることでもあり、一円の重さを知り、徴収事務にもいい効果が期待できるからです。
 さて、パソコンの普及、メール等を初めとしたデジタル技術の発展に伴って、主税局を含めた都庁の仕事の進め方も、効率化という点でさま変わりをしてきております。特に、ここ数年は加速度的に通信技術が向上しており、主税局においても、これまでは電話などで問い合わせをしていたことをホームページ上で簡単に調べることができるAIチャットボットの導入など、税務事務のデジタル化に向けた検討を進めていると聞いております。
 しかし、忘れてはならないことは、税務行政も人が担っていることであります。また、ご敬老の方々がAIチャットボットをすぐに操作をできるとは考えにくいところもあります。電話の重要性も引き続き大切にしてほしいと思います。

 税務事務のデジタル化、効率化を進めることは重要ですが、あくまでも補完機能でありまして、その一方で、人がこれらを操作することを忘れてはなりません。都民である納税者等とのフェース・ツー・フェースの重要性は変わらないと考えます。
 そこで、ある意味、客先最前線の現場を持つ主税局では、納税者の方たちとの面談能力や接遇の向上に向けてどのような育成を図っているのかもお伺いします。

大久保総務部長オリンピック・パラリンピック調整担当部長兼務

都民からの信頼確保は税務行政の基本でございます。そのためには、納税者との意思疎通と、親切できめ細やかな対応が不可欠でございます。
 このため、主税局では、説明力向上研修、接遇研修等を実施しておりますが、とりわけ接遇研修につきましては、全ての職員が必ず受講する研修として重点的に取り組んでおります。この研修では、挨拶や言葉遣いだけではなく、相手の意思を尊重し、正しく聞く力を醸成するために、納税通知書を送付した後の問い合わせ対応など、実例をもとにしたロールプレーイングを取り入れているところでございます。
 このような実践的な研修で身についたスキルは、納税者と接する場面において十分に生かされていると考えております。

大津委員

これらの専門知識を身につけることも大変大切であります。あわせて、社会性や人間性を意識していくことも重要でありますし、両輪で育成を図っていっていただきたいと存じます。
 先日、主税局千代田都税事務所職員がチケット不正転売容疑で逮捕されたという報道がございました。職場を離れても、一都民、県民として、法令を遵守して生活をしていかなくてはなりません。公私の私の部分でも、こうしたことにより一瞬にして冷たい視線で都民から見られ、信頼が損なわれてしまいます。信頼回復というのは大変時間がかかるものでもあり、こういうときだからこそ、逆に信頼回復に地道に努めるべきでもあります。
 税の徴収現場で真面目に一生懸命頑張っている職員たちにしてみれば、やるせない気持ちで全体の士気も低下をします。それだけでなく、対都民に対しても信頼を損なうことになりますので、信頼回復ということで、人材育成、研修は、さらに今こそまた必要となってくると考えます。

 デンマークに在住をしていた人に、このようなことを聞いたことがありました。どうしてそんなに高い税金を、国民は皆しっかりと納税をしているんでしょうかと。
 そのとき、在住のデンマーク人はこのように答えました。私たちは国を信頼しているんですよ、そこに公僕として仕える職員を信頼しているんですよと、着服なんかあり得ないんですと。だから高い税金を納めています、しかし我々は、それらをまた老後に使おうとか、そういうことは考えておらず、自分で自分の老後はしっかりとやっていけるように、自分でいろいろと体制をとって努力をしているんだと、あくまでもこの税金は万が一のときのセーフティーネット、保険としても納入をしているので、かといって、自分たちは自己責任で頑張るんだと、それが基本だということを話していました。
 国は、特に増税のとき、増税じゃなくても、やはり国民から信頼をされることで、初めて税金について議論ができるものだと感じたものです。

 さて、私は約二十年間、ものづくりの会社で勤めておりました。その会社員のときに、やはりものづくりですから、新入社員全員、まず、その現場である工場を体験させていました。そこの場で、安全と品質、技術をもって社会に貢献するということをたたき込んで教育をするためのものです。ですから、溶接をしたり、流れ作業でいろいろな作業をしていたりということをしておりました。
 同様に、東京都庁でも、まずは税金をいただく方たちとの接点、それが現場でもありますので、そういうふうに主税局に最初配属をされて、そこで学んでいくというのは、一生涯都庁マンとして生きていく中で重要な観点で生きていくということを期待しているところでもあります。
 主税局では、毎年百人を超える新規採用者が配属されています。都庁全体に採用される事務職の約二割は税務部門に従事することとなります。未来の都政において活躍する若手職員の多くを抱える主税局は、その人材育成を担っており、責任も重大であります。

 主税局に配属された職員についても、都民から頂戴をいたす税金の大切さを感じるよう育成することが大切ですし、同時に、新人であっても、納税者にとっては同じ税務職員の一人であり、税務のプロを目指して、段階的に専門知識や実務を身につけていっておられます。
 そこで、新規採用職員を一日でも早く一人前の税務職員に育成することが求められますが、主税局では、具体的にどのように育成をし、どのような人事配置の考え方も含めてお伺いいたします。

大久保総務部長オリンピック・パラリンピック調整担当部長兼務

まず、人事配置の考え方でございますが、税務の現場である都税事務所等は、都税の賦課徴収を通じて都民の暮らしの実情や納税者の気持ちを知ることができ、また、こうした経験は、税務の職場から離れても、都庁職員として長く働く中で必ず生かされるものでありますことから、主税局では、全ての新規採用職員を都税事務所に配置し、課税、徴収といった実務を担当させております。
 次に、人材育成の取り組みでございますが、まず、採用直後に実施する新任研修によりまして、主税局職員に必要な基礎的知識、電話対応技術を習得させるほか、各職員が担当する税目の実務研修を受講させ、基礎的な知識、スキルを身につけさせております。
 また、日々の業務を通じた実践的な育成を図る観点から、一人一人の職員に対しまして、実務経験が豊富な先輩職員を専属のインストラクターとすることによりまして、効果的なOJTに取り組んでいるところでございます。

大津委員

教育ということの重要さを感じます。都庁の長い歴史の中では、石原知事の時代に都庁改革アクションプランということを位置づけて、あの当時、全体的に窓口サービスの接遇が社会問題にもなっていたところでもありました。それを、やはり意識改革をしていこうということで、高いサービスを提供するため、来訪者への声かけや不快感を与えないなど懇切丁寧な対応をしようと、さまざまな取り組みが行われてきたこともありました。
 一方、昨今では、体罰教師がいろいろと取り上げられたときには、教育庁の中では、体罰教師が繰り返すというところに着眼しまして、アングリーマネジメントという、どんなに腹が立っても六秒間とにかく黙ってこらえると、そういうことで、怒らない、手を出さない、そんな教育をしてきたところも非常に興味深いところでもありました。

 さまざまな局がさまざまなことをしている中で、新人は、基本的に主税局の場合、都税事務所という現場最前線に配属をし、実務研修、OJTの段階的な育成、また、都庁内の他局と比べても、主税局は、昔から非常に研修に重きを置いてきた局だと認識をしています。
 都庁職員にとっては、都民のために働くという考え方が基本であり、新規採用職員はぜひ、都民とのやりとりを通して、税務知識、税の重み、また都民感覚、都民としての意識も養っていくことでありましょう。
 さて、この接遇でありますけれども、こうしたさまざまな研修の結果、どのように生かされ、どのように実際の窓口、客先最前線で接遇に生かされているのでしょうか。

 都税事務所の徴収部門には、滞納者に厳しい滞納処分を行うだけではなく、納税者の実情に寄り添った丁寧な対応も行ってほしいと考えています。さまざまな事情や不安を抱えて相談に来る納税者にも温かい対応をすることで、一人一人の生活、その背景にあるものが見えてくるところから、まことの納税業務ができるからであります。
 そこで、こうした人材育成の成果が、都税の最前線である徴収の現場でどう生かされてきたのかお伺いします。

川上徴収部長

委員のお話にあったとおり、徴収部門では、都税が滞納となった納税者に催告書を送るだけではなく、電話や訪問などにより接触を図り、納税者の実情を把握するように努めてございます。その際には、職員が高度な専門知識を持つことに加えまして、納税者の気持ちに寄り添った温かいマインドも重要でございます。こうしたところに、接遇研修などで学んだ成果が生かされると考えてございます。
 また、都税の現場には、税務経験が長く、高度な専門知識や高いコミュニケーション能力を持った職員もおりまして、ベテランと新人をペアで行動させることなどにより、研修だけでは学べないノウハウの継承にも努めております。
 こうした人材育成の成果は、納税者の実情に寄り添ったきめの細かい滞納整理の実践を支え、高い徴収率の実現につながっているものと考えてございます。

大津委員

こうした納税者の個々の事情にも丁寧に対応しながら、都税だけでなく都全体のイメージアップにつながると思いますので、ぜひ、そういう意識のもと、現場の人材育成に取り組んでほしいと思います。都民にしてみれば、納税事務所の窓口の応対も、建設局の建設事務所の応対も、全部が東京都一つであるからです。
 さて、都庁では、新規採用職員をマンツーマンで育成するため、先輩職員を仕事の進め方などの相談役となるチューターに指名するという制度を導入していると聞いていますが、主税局が全庁に先駆けて独自に導入をされてきました。若手職員を初めとした後輩職員の育成に関しましては、これまで都政の中枢で活躍もされてきた塩見主税局長ご自身としても、熱心にこれに取り組んできたと思っています。
 そこで結びに、局長の人材育成にかける思いをお伺いしまして、質問の結びとさせていただきます。

塩見主税局長

人材育成に当たりましては、るる今、先生からもいろいろお話がありましたとおりに、私ども先輩職員が、どのように若手の後輩職員に、いろんな仕事あるいは人間性も含めてそれを伝えていくかということが非常に重要であるというふうに思っています。早期に一人前の税務のプロとして育成していくということはもとより、将来の都政を支える有用な人材として、幅広い視野の涵養、人間性の醸成も図っていかなければならないものと考えているところであります。
 この人間性の醸成という点におきましては、先生からもお話がありましたが、都としては、いまだに事実関係を正確に把握していないといいますか、事情聴取ができていないわけでありますが、先日、主税局の職員がチケット不正転売禁止法違反の疑いで逮捕されたということにつきましては、まことに遺憾な事態でございます。法令を遵守すべき職員が都民の信頼を裏切る結果となり、公務員としての自覚に欠けた行為であり、私としても痛恨のきわみでございます。

 人材育成に関しましては、主税局は多くの現場を持っているわけであります。都税事務所といった現場を持っているということであり、税務職員としての専門性を発揮することは、納税者に安心感、信頼感を持ってもらう上で大切なことでありますが、それが余りに専門性に徹し過ぎて、納税者の理解を得られないような仕事ぶり、そういうことをするようなことであってはならないというふうに思います。
 まさに、都民目線での仕事の実践が必要であり、主税局の新規採用職員や他局からの転入職員も、納税者と直接現場で接することで、都民の思いをじかに感じ、そこで都税が都の事業の財源として貴重なものであるかということがわかるとともに、各局の事業を自分なりに勉強する機会として、幅広い視野の涵養に資するものとなり、公務員としての意識の向上にもつながっていくものと思っております。

 これらの人材育成をさらに進めていくため、現場のトップである所長を集めた所長研修におきましては、今年度、人材育成をテーマに研修を行い、各所長とも思いを共有したところでございます。
 いずれにいたしましても、職務の遂行に当たっては、職員一人一人が公務員の原点である全体の奉仕者の立場に立ち、コスト意識や成果重視の経営感覚を持って、自分が主税局、ひいては都庁を代表する顔であるとの自覚のもと、都民の幸福追求をみずからの使命として職務に全力で取り組む都庁のスピリットと申しますが、都庁魂といったものが、そういうものを職員一人一人がしっかり持つということが、人材育成に関しましては非常に重要であると、非常に長くなって恐縮でございますが、私はそんなふうに考えている次第でございます。