大津ひろ子の東京都議会発言

(大津ひろ子)

障害を理由とする差別の解消を推進する法律、いわゆる障害者差別解消法が、ことし四月一日から施行されます。この法律は、平成十六年の障害者基本法の改正、平成十八年の国連総会における障害者権利条約の採択などを経て、平成二十五年に成立したものです。
 法の目的としては、全ての国民が障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら、共生する社会の実現につなげることを掲げています。
 この理念は、私たちが社会の中で暮らしていく上で最も大切なことであり、都政の全ての施策の根底に据えるべき理念であるといっても過言ではありません。
 国において、各省庁で具体的な対応への基本方針が示され、都においても関係者と協力しつつ、施行に向けた準備が進められていると思います。ただ、法の施行に向けた一過性の取り組みではなく、国民生活、都民生活のあらゆる場面で、相互に尊重し合い、誰もが生き生きと暮らしていくためには、民間も含めて、私たち一人一人の具体的かつ継続的な努力も求められます。

 知事の真の共生社会の実現に向けた決意をお聞かせください。
 サッカーワールドカップやハロウィン等のビッグイベントが開催されるたびに、東京都内の各繁華街では、若者を中心とした群衆による交通妨害や各種トラブルが発生をし、社会現象としてメディア等にも大きく取り上げられております。特に私の地元である渋谷では、これまでにも二〇一三年、サッカーワールドカップアジア予選や、秋の風物詩として定着しつつあるハロウィンの際に、渋谷駅前スクランブル交差点やセンター街に身動きがとれなくなるほどの群衆が押し寄せて、騒然となる状況が発生しています。
 幸いなことに、警視庁による機動隊を導入した万全な警備体制の効果により、これまでに大きな事故は起きていませんが、今後、二〇二〇年東京オリンピック・パラリンピックに対する国民の期待が高まる中、今夏のリオデジャネイロオリンピックを初め、サッカーワールドカップやラグビーワールドカップ等の国際的なスポーツイベントがめじろ押しです。
 これまで以上の群衆による大混乱が予想されると考えますが、このようなビッグイベント時の渋谷駅周辺における警備にどう取り組まれていかれるのか、警視総監に伺います。
 私はこれまで、使い捨ての旧ライターによる火災事故の防止対策をたびたび本会議で取り上げてまいりました。喫煙率は年々下がる傾向にあるものの、東京消防庁管内で起きた火災原因の一番多いのは放火、二番はたばことなっています。
 さらには、死者が出た住宅火災の原因の一位は、寝たばこによるものでした。たばこの火が、布団や灰皿へたまった吸い殻に燃え移って火災が起こり、大きな火災にならなくても、一酸化炭素中毒などで簡単に亡くなられてしまうこともある怖い火災です。今後、たばこによる火災防止のため、働きかけていく必要があります。
 そこで、たばこによる住宅火災で亡くなられた方の発生状況とその防止に向けた取り組みについて、消防総監に伺います。
 消防署別の火災件数では、地元の渋谷消防署は都内で二位になっています。渋谷は繁華街を幾つも抱えているため、たばこのポイ捨てによる屋外の火災件数が室内件数よりも上回っているため、たばこ全体の火災件数を押し上げています。たばこのポイ捨てで側溝の中が、また街路樹を支えている支え木が燃えたり、また落下点によっては甚大な被害が起きることもあり、今後、マナーの向上など、全火災の一五%を占めるたばこ火災に対して、安全なまちづくりを働きかけなくてはなりません。
 渋谷区にある都心部唯一の基幹災害拠点病院である都立広尾病院を、区内の旧青山病院跡地などに、七年後の平成三十五年度に移転改築をし、仮称首都災害医療センターとして整備する構想が予算案から明らかになりました。
 渋谷の旧青山病院跡地周辺は、湧水や緑や桜、自然環境を保護し、品格と文化性を尊重するとともに、児童の育成に深くかかわってきた特別な地区です。親王梨本宮がお住まいになり、今もご子孫が一隅に居住され、この地にあった都児童会館は、皇太子明仁親王のご結婚と浩宮徳仁親王のご生誕を記念し、民間の寄附により昭和三十九年に建設されたものでありました。
 旧青山病院、そして旧児童会館、旧こどもの城と、高度な児童教育施設と医療がこの地にあった歴史から、病院の整備にあわせて、児童の健全な育成や医療、あらゆる世代間交流を図ることのできる精神性の高い場の創出を願う声が、ずっと以前から、地元から多く寄せられています。
 最先端の災害医療、救急医療を提供する病院の移転、改築に当たっては、こうした歴史的経緯を踏まえるとともに、地域住民の皆様の理解や協力を得ながら検討を進めていくことが重要であると考えます。都の見解を伺います。

 技術立国日本についてです。
 全国のアスベスト含有建築物の解体棟数は、国の推計では二〇四〇年ごろにピークを迎えます。しかし東京では、高度経済成長期の建物の再開発なども進み、既にピークを迎え、二〇五〇年ごろまで、毎年一万五千件程度のアスベストの使用可能性がある建築物の解体工事が続くと推定されています。アスベスト飛散による健康被害防止の徹底が必要です。
 ところが、解体工事現場においては、アスベストが飛散する事例や事前調査が不十分な事例があります。現場従事者からは、アスベスト検査費用が高いため調査もせず、適切な工事費用を負担しない発注者がおり、その結果、不適切な工事が行われる事例がいまだに見受けられると聞いています。
 傾いたマンションのくい打ちや、最近の食品廃棄物のマニフェスト偽装と同じく、アスベスト調査においても偽りがあってはなりません。食の安全とともに技術立国日本の危機と捉えるべきです。
 都は、平成二十六年度から、アスベストの飛散防止のため専門職員Gメンを二名置き、解体工事現場へ立入調査を実施していますが、もっともっとGメンを増員し、抜き打ち検査も強化すべきです。さらに、首都直下地震など大規模災害への平時からの備えを推進するため、直近の解体の有無や規模に関係なく、事前の立入検査も行うべきです。
 解体時の立入検査の調査結果については、被害の未然防止の観点から、わかりやすく都民、関係事業者に公表すべきと考えます。抜き打ち検査を含めた立入調査の強化により、しっかりとした調査のくいを打ち込み、健康被害の防止に万全を尽くすべく、都の見解を伺います。

 誰しもがわかりやすく暮らしやすい都市東京施策についてです。
 今月、東京都環境審議会から、東京都環境基本計画の改定に向けて答申が報告され、この中で、中長期的視点に立って、二〇二〇年の大会後を見据えた環境レガシーの形成が重要とされております。
 一月には、来年度から五カ年計画とする廃棄物処理計画の策定に向け、廃棄物審議会の最終答申が出されています。この中でも、今後の東京が直面する課題として、超高齢化、人口減少社会の到来、首都直下型地震等大規模災害への備え等が指摘されています。
 かつて昭和三十九年の東京オリンピックの際には、開催地にふさわしいきれいな東京が目指されました。当時、皆さんの家の前の路上にはコンクリート製のごみ箱が置かれ、美観や交通の面からポリバケツ容器によるごみ収集方式が導入され、公衆衛生の向上にも大きく貢献しました。
 現在、国においても、循環共生型社会の構築として、二〇二〇年東京オリンピック・パラリンピックに向けた政策の一つとして、廃棄物の統一分別ラベルの導入等が検討されることになっています。
 例えば、こうした検討過程においても、都はほかの大都市とも連携しつつ、東京を訪れる方が日本のどの都市に行っても混乱のない、統一した誰しもがわかりやすい廃棄物の分別ができるなど、東京が積極的に発言をし、新たな時代の廃棄物施策をリードしてほしいと考えます。
 こうした課題のもとでの今後の廃棄物施策の展開、とりわけ3R、つまり発生抑制、再使用、リサイクル施策について、都の見解を伺います。
 近年、外国からの訪問客等を想定し、都市のわかりやすさを高める手段として、鉄道駅におけるナンバリングや案内表示のデザイン統一など、工夫が見られるようになってきました。そこに住む人だけでなく、誰しもがわかりやすい都市にしていくことは、首都東京を暮らしやすくするとともに、一層都市としての魅力を高めていくことにもなります。
 東京には、世界に誇れる貴重な歴史的、文化的施設やすばらしい景観等があります。浜離宮恩賜庭園や小石川後楽園を初め、深山幽谷の趣のある庭園、都立庭園は、都民だけでなく東京を訪れる方々にとっても、心が和む都市の貴重な空間です。
 庭園へのアクセスについて、わかりやすい案内や表示の改善を図るとともに、ライトアップなどの東京の夜の景観を楽しめる資源としても検討を進めるなど、都立庭園を訪れるお客様に対するサービス向上の取り組みが必要だと考えますが、所見を伺います。
 新宿都庁から東京湾までは、直線でわずか七・四キロの距離にある東京湾ですが、ダイナミックに発展しつつある東京の姿を、都の視察船「新東京丸」に乗り、海から改めて我々のまちを眺めることで、多くの方々が新たな東京を発見し、感嘆の声を上げられています。
 船の発着場へのアクセスについても、最寄りの駅から歩いて行き着けるようなわかりやすい案内サインは、おもてなしの一つでもあります。

 「新東京丸」乗船場へのサインシステム等の充実や、魅力をアピールする工夫について伺います。
 オリンピック・パラリンピック大会やラグビーのワールドカップを契機として、文化芸術振興にも一層の力を傾注し、東京をアピールしていくべきです。
 例えば、東京都交響楽団は、前回のオリンピックの際の記念文化事業として昭和三十九年に設立されましたが、世界の各都市との音楽交流、国内の学校、被災地と、さまざまな音楽交流を通して、心の潤いや都市の楽しさの面でも、今以上におもてなしの貢献が可能と考えます。都の見解を伺います。
 以上で結びとさせていただきます。(拍手)

知事(舛添要一)

大津ひろ子議員の一般質問にお答えいたします。
 真の共生社会の実現についてでありますけれども、障害のある人もない人も社会の一員として、お互いに尊重して支え合いながら、地域の中でともに生活する、そういう社会が私の目指す共生社会であります。
 そのために、都はこれまでも、障害者が地域で安心して暮らせる社会、それから障害者が生き生きと働ける社会、全ての都民がともに暮らす地域社会、そういう実現を基本理念に掲げまして、さまざまな分野にわたって施策を展開してまいりました。
 四月には、障害者への不当な差別的取り扱いの禁止と合理的配慮の提供を求めます障害者差別解消法が施行されます。
 現在、そのためのハンドブックやバリアフリーのガイドラインも作成しておりますけれども、障害者への理解をさらに深めていくためには、行政はもとより、民間事業者や都民一人一人が、社会のさまざまな場面において、心のバリアフリーを推進することが必要だと考えております。また、ユニバーサルデザインのまちづくりも一層進めていかなければならないと考えております。
 ご承知のように、東京は世界で二回目のパラリンピックを初めて開催するまちであります。そのレガシーとして、障害者がその能力を生かして、みずからの行動を決して、そして夢を追い続けることができる、いわゆるノーマライゼーションと、こういう理想を掲げて、真の共生社会を実現するために、ソフト、ハード両面で努力をしていきたいと思っております。
 そのほかの質問につきましては、警視総監及び関係局長が答弁をいたします。

警視総監(高橋清孝)

ビッグイベント時における警備についてでありますが、渋谷駅周辺等の繁華街において多くの人が集まる機会には、雑踏事故やトラブルの発生が懸念されることから、こうした事案の防止が重要であります。
 このため、警視庁では、雑踏事故やトラブルの防止、一般交通の円滑と安全を確保するとともに、地域の平穏を保つため、必要に応じて機動隊を配置し、周辺地域の通行制限や集まった方々の整理誘導を行っております。
 今後も、各種メディアを通じ、警備の必要性や方法について積極的な情報発信を行い、繁華街を訪れる方々の理解と協力の確保に努めるとともに、自治体や公共交通機関、地域住民の方々と協力しながら、各種事故防止等の万全を期してまいります。

消防総監(高橋淳)

住宅におけるたばこを原因とする火災についてでありますが、平成二十七年中の速報値では、東京消防庁管内のたばこによる火災の死者は十六人であり、住宅火災における死者六十九人の二三・二%を占めております。
 このため、当庁では、ホームページ、リーフレット等の活用により、喫煙管理の徹底など、たばこによる火災の防止対策を広く都民に注意喚起するとともに、火災の早期発見に効果がある住宅用火災警報器の設置や防炎効果のある寝具類の普及促進に努めております。
 また、高齢者等を対象に、消防職員が直接訪問する防火防災診断により、たばこによる火災を含めた住宅火災の発生防止を図っております。

病院経営本部長(真田正義)

首都災害医療センター、仮称でございますが、その整備についてでございます。
 都立病院は、高水準で専門性の高い総合診療基盤に支えられた行政的医療を適正に都民に提供し、他の医療機関等との密接な連携を通じて、都における良質な医療サービスを確保することを基本的役割としております。
 首都災害医療センターは、基幹災害拠点病院としての機能を強化するとともに、救急医療や新たな医療課題にも対応してまいります。
 移転改築に当たっては、地域の理解と協力が必要不可欠であることを認識した上で、地域住民や渋谷区を初めとする関係機関と連携しながら、検討を進めてまいります。

環境局長(遠藤雅彦)

二点のご質問にお答えいたします。
 まず、アスベストに係る立入検査等についてでございますが、都では、解体工事の規模により、区市と分担してアスベスト飛散防止指導を行うとともに、労働基準監督署とも共同立入検査を実施し、アスベスト解体工事の届け出がなされた工事現場の九割以上に立入検査を行っております。
 また、届け出のない解体工事現場にも、廃棄物の処理の確認とあわせて、抜き打ちで検査を行っております。
 こうした取り組みを、工事事業者向けの講習会などを通じて周知し、無届け及び不適正解体防止を推進しております。
 加えて、区市担当職員に対して、アスベスト診断士などの資格を有する都の専門職員による講習会の充実や解体工事現場での技術支援を図るなどにより、アスベスト飛散防止のための対策を強化してまいります。
 次に、今後の3R施策の展開についてでございますが、都はこれまでも、小型家電のリサイクルや食品廃棄物の排出抑制、いわゆるリデュースを初めとする3R施策の促進を図ってまいりました。
 今回の廃棄物審議会による最終答申では、これまでの3R施策の成果などを踏まえて、使い捨て型ライフスタイルの見直しや再生品の利用拡大など、3Rのさらなる推進策を廃棄物処理計画に盛り込むことを提言しております。
 今後、国の統一分別ラベルの導入に向けた検討などにも、現場をよく知る都が積極的に提言を行うなど、そのリーダーシップを発揮し、国や区市町村、関係各局と連携しながら、二〇二〇年大会とその後を見据え、3R施策を含む廃棄物行政を展開してまいります。

建設局長(佐野克彦)

都立庭園への来園者に対するサービス向上の取り組みについてでございますが、都立庭園は、いずれも文化財に指定されるなど、我が国を代表する名園であり、多くの方々に楽しんでいただけるよう、来園者の利便性を高めるとともに、新たな魅力を発信することは大変重要でございます。
 都立庭園では、初めて訪れる来園者にも最寄りの駅からの経路がわかるよう、案内表示を設置するなどの取り組みを行ってまいりました。また、六義園では、しだれ桜やもみじ、浜離宮恩賜庭園では近代的なビルを背景とした茶屋群のライトアップを実施してまいりました。
 今後とも、来園者の利便性や庭園の魅力を高めることで、都立庭園のサービス向上に積極的に取り組んでまいります。

港湾局長(武市敬)

「新東京丸」についてのお尋ねでございます。
 「新東京丸」は、首都圏四千万人の生活と産業を支える東京港の役割や、日々発展していく臨海部の魅力をより多くの皆様に知っていただくための、都が運航する視察船でございまして、都民を初め、東京への国内外の来訪者など、年間一万二千人の方々に利用していただいております。
 船着き場となる竹芝小型船桟橋へのアクセスなどにつきましては、現地に看板を設置するとともに、パンフレットやホームページに地図を掲載しております。
 今後とも、おもてなしという視点から、利用者にとってよりわかりやすく、かつ、より魅力が伝わりやすくなるよう、ホームページに掲載する地図や案内表示等に工夫を凝らすなど、一層の改善を図ってまいります。

生活文化局長(多羅尾光睦)

東京都交響楽団の取り組みについてですが、半世紀の歴史の中で日本を代表する交響楽団に成長した都響は、定期演奏会を中心に活動し、あわせて小中学校向けの音楽鑑賞教室や福祉施設への出張コンサートなど、多くの人々に音楽と触れ合う場を提供しております。
 また、昨年創立五十周年を迎えたことを記念して、ヨーロッパ五カ国、六都市において公演を行いましたが、毎回多くの聴衆が訪れ、高い評価をいただいたところでございます。
 東京二〇二〇大会に向けて、世界的指揮者である大野和士氏を音楽監督として今年度から迎え、質の高い演奏活動を通じて、より多くの人々に音楽の魅力や感動を伝えていくとともに、文化都市東京を国内外にアピールしてまいります。