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「イギリスにおける消費者保護行政について」編

都から国を動かし 生活の中の危険事故から都民の命を守る!

子供の火遊びによる火災の7割が使い捨てライターによる事故・火災が連続しました。
簡単に着火できないようロック装置をつける等安全強化し、危険の芽をつみ取る事故防止が必要でした。
都から国を動かし、閣議決定し、平成22年12月27日から法施行、安全基準(PSマーク)に適合しないライターの生産、輸入ができなくなり、平成23年9月27日からは、販売も禁止されました。
すでにEUでは平成18年からライターの安全規制をはじめていましたので、この英国の視察は、その後の日本のライター安全規制の先駆けとなる調査になりました。ご紹介します。

大津ひろ子の視点

税金

「デンマークは、国民が国を信頼してるから高い税金を払ってられる」(デンマーク在住18年(国際結婚した)日本人の言葉)。日本は、納めた年金が社保庁の人災で消える、税金の無駄遣い、不祥事が続いた。
国民から心底信頼される国になれない限り、増税してはいけない。

教育

ヨーロッパは教育が徹底しているので社会全体が成熟してる。犯罪の起きない国、事故に遭わない社会生活を持続可能にすることで、税負担軽減を図る誠の税金の無駄遣いにつながるのではないだろうか。

安全

市場には安全なものだけが販売されて当然との思想が強い。介護ベッドも国産・輸入品とも安全実験を終え市場で販売する。日本は、介護ベッドの落下防止柵の6cmの隙間で首をはさまれた事故、こんにゃくゼリーの窒息事故、と多く方が亡くなっているにもかかわらず、日本の業界は抜本的な製品や食品改良がいまだなされていない。製品や食品が人の命を奪ってはならない。都民の命と安全を守るため消費者保護に邁進していく。

イギリスにおける消費者保護行政について

はじめに

介護用ベッドで落下防止柵の6㎝の隙間に首をはさまれ亡くなられた事故、ベビー用おやつを食べたにもかかわらず喉につまり窒息事故を起こしたベビー達......。なぜ、寝ている間に、食べている間に、大切な命が失われなくてはならないのだろうか。
都では平成 20 年、2,571 人がこうした不慮の事故で亡くなっている。その数には交通事故による死者数 337 人も含まれている。多いとみられている交通事故は全体の1割強なので、それ以外の日常生活の中での事故の方が圧倒的に多いことがわかる。
消費生活、すなわち衣食住にかかるこれらの事故から「都民の命と安全を守る」行政は、今後の東京の消費者保護行政の大切な柱となるであろう。
今回の視察では、消費者保護行政の長い歴史を有する欧州を訪れた。

イギリスの消費者保護行政のしくみ

イギリスにおける消費者保護、公正取引保護を所管する中央政府機関は、ビジネス・イノベーション・技能省(BIS: Department for Business, Innovation and Skills)であり、日本でいえば経済産業省に相当する。消費者保護や適正取引について政策立案と関連法令の立法化を行う。EU 規制のイギリス内での施行にも責任を有している。
また、消費者団体等への財政支援や、公正取引庁(OFT: Office of Fair Trading)、コンシューマー・フォーカス(Consumer Focus)、全国市民助言局協会(National Association of Citizens Advice Bureau)へも財政補助を行い、公正取引庁や地方自治体の取引基準局(官)などと連携しながら、消費者保護行政を推進している。
視察では、ビジネス・イノベーション・技能省(BIS)を訪問してきた。

公正取引庁(OFT)と取引基準局について:

イギリスでは、不公正な商取引が一連の法により禁止されており、これらの消費者法令規則を遵守させる行政機関として、国レベル(イングランド)では公正取引庁が、地方レベルでは各県(County, Unitary)に取引基準局(官)が設置されている。
公正取引庁は、企業等の取引に係る法令順守を監視し、違法行為に対し法的な措置・処分を行う。独占禁止、企業合併、企業の公正取引の確保に係る法の履行とともに、消費者保護にも監視の目を光らせている。また自治体の取引基準局(官)と連携して消費者啓発や企業への教育指導も行っている。
取引基準局(官)は、公正取引の確保、適正な計量、適正表示の確保を含め、適正取引と消費者保護に責任を持つ地方自治体の組織である。
視察では、リッチモンド・アポン・テムズ区の首席取引基準官から話をうかがった。

コンシューマー・フォーカスについて:

消費者の声を代表し、政府や関係行政機関、事業者へ様々な働きかけを行う全国機関が、コンシューマー・フォーカスである。消費者・不動産業・救済法に基づき 2008 年に設立し 170 人の専門スタッフのいるイギリス最大の消費者擁護機関。
BIS(省)から補助金を受けており、総予算 1,500 万ポンド(約 21 億6千万円)の約2/3 はエネルギー関連や郵送・運輸関連の対応に使われている。
全国的に拡大し問題になっている苦情等に対する調査権や事業者に対する情報開示要求権、スーパー・コンプレインツ(Super-complaints)つまり消費者保護のための重大問題を公正取引庁に申し立て提起する権利があり、公正取引庁はこの問題の対応策を公表しなければならない。全国の市民助言局、自治体の取引基準局(官)、他の消費者関係団体から苦情や事例のデータを一元的に集約し、関係機関へ情報を提供・共有する。

全国市民助言局協会について:

全国の市民助言局(後述)の相談員の研修・訓練や連絡調整、ウェブサイトを通じた消費者情報の提供などを行っている。
具体的な消費者相談の窓口として、国レベルではコンシューマー・ダイレクト(Consumer Direct)が担い、地方自治体レベルでは市民助言局(Citizens Advice Bureau)が担う。
コンシューマー・ダイレクトは、国民生活の基本に関わる重要な分野、すなわちエネルギー(電気、ガス等)、郵便・配送を中心とした消費者相談を電話と電子メールにより、全国から受け付けている。また、消費者が商品の購入前後に留意すべき点などについて、ウェブサイトを通して幅広く情報提供を行い、注意を喚起するなどの方法により消費者啓発も行っている。
目的は、全国の消費者への情報提供とアドバイスを行うこと。公正取引庁(OFT)によって運営されている機関であり、必要に応じて他の公的な機関を紹介する。そのため、取引事業者に対して、指導や規制をするといった直接的な仲裁機能は有していない。
一方、地方自治体レベルでの市民助言局は、全国(イングランド、ウェールズ、北アイルランド)に約 440 箇所、ロンドン市内には約 50 箇所あり、消費者からの無料相談(対面、電話、電子メール、ウェブを通して)に応じる。消費者の声を国、自治体、企業への政策や事業に反映させる。
年間で、約 190 万人から、600 万件の相談が寄せられている。約 26,000 人が従事し、そのうち約 20,000 人が訓練を受けたボランティアである。
政府から財政援助を受けた非営利団体(registered charity)で、1939 年に設立され、約 70 年の歴史がある。

金融サービス庁(FSA: Financial Service Authority)について:

金融機関の監督組織としては、金融サービス及び市場法に基づき設置された金融サービス庁(FSA: Financial Service Authority)が設置されており、効率的で秩序ある公正取引市場の形成、金融機関の競争力の向上などを目指し指導監督を行っている。同時に金融機関や金融商品に対する消費者への情報提供や消費者保護も行っており、政府から独立した公的組織だが、金融業界からの拠出金で運営され、役員や最高幹部などは大蔵大臣が任命する。

イギリスの消費者保護規則について

最近の新たな消費者保護規則としては、2008 年5月 26 日に施行された「不公平な商取引からの消費者保護に関する規則(CPRs: Consumer Protection from Unfair Trading Regulations 2008)」が定められた。
これは 2005 年の EU 指令「商取引上の不公平な慣行に関する指令(UCPD: EU Unfair Commercial Practices Directive)」を、イギリスで国内法化したもの。これまで複数存在していた消費者保護関連法をまとめて、イギリスの消費者保護制度全体を欧州の制度と調和させたものである。過去数十年で最も大規模な消費者保護関連法の改革であるといわれており、地方自治体協議会(LGA)も歓迎している。
具体的には、イギリス内の企業に対し、31 項目を禁止事項として挙げている。例えば、商品について間違った情報を流すこと、契約上の義務を隠すこと等が禁止され、この規則に違反した者は罰金を科されるほか、刑務所に収監されることもある。
以上、行政組織のしくみについては下記の図を参照(クリックで拡大)。

イギリス消費者保護 イギリスの消費者保護行政のしくみ(クリックで拡大します)

【主な出典】
■ビジネス・イノベーション・技能省 http://www.bis.gov.uk/
○ヒアリング時の提供資料
・UK Consumer Policy
・Consumer Protection Legislation
・Consumer Law Enforcement and Planned Reforms
■公正取引庁 http://www.oft.gov.uk/
■取引基準局
リッチモンド・アポン・テムズ区からのプレゼンテーション及びヒアリング
■コンシューマー・フォーカス http://www.consumerfocus.org.uk/
■市民助言局 http://www.citizensadvice.org.uk/
■コンシューマー・ダイレクト http://www.consumerdirect.gov.uk/
■金融サービス庁 http://www.fsa.gov.uk/
■イギリスの消費者保護規則について
財団法人自治体国際化協会ロンドン事務所発行「マンスリートピック」他

イギリス ビジネス・イノベーション・技能省を訪問して

技能省の皆さんと意見交換
(BIS: Department for Business, Innovation and Skills)訪問
少し粉雪が舞う中、ビジネス・イノベーション・技能省(日本の経済産業省にあたる)を訪問し、 消費者保護政策課 Mr. David Rawlins (Assistant Director, Consumer Protection and Enforcement Policy) 消費者保護法・施行改革課 Mr. Ed Blades (Assistant Director, Consumer Law and Enforcement Reform) 消費者保護上席政策顧問 Mr. Peter Deft (Senior Policy Advisor, Consumer Protection) と意見交換した。
13 世紀から消費者保護の歴史を有するイギリスは、「不正取引から国民を守ること」を消費者保護の基本原則として、法規制は、国レベルでは公正取引庁が、実行は地方の取引基準局が行っている。
最新の話題は、新パイロット事業を本年末から2年間開始することだ。これは消費者の権利に基づき、紛争が起きた場合、公正取引庁と 10 の地方自治体が消費者と企業間に直接介入し、消費者と企業間の「自発的賠償金」を促し、法廷を通さずに和解に導く試みである。2年のテスト期間を通して検討の後、施策に反映していく方針である、との最新情報を提供してくださった。
以前は、訴えられた人は収監されても訴えた人には賠償金は返らなかったが、この制度では、企業へ支払いなさいというペナルティを課すことができる。もちろん企業にも反論できる場を設けており、このため「消費者にも企業にも、互いによい方法ではないか」と保護政策課は言う。
相談件数等を尋ねたところ、「イギリスではこの 1 年間で、公正取引の相談件数は2,650 万件であり、消費者の被害総額は 66 億ポンド」との回答であった。
消費者損害額 66 億ポンドは、日本円に換算し約 1 兆 5,600 万円相当(2007 年当時の為替換算)。対 GDP(国内総生産)比では、0.5%となる。相談件数約 2,650 万件はイギリス人口約 6,000 万人に占める割合からみて約5割と高い。件数はアンケート調査の結果による数字を示しているようなので高い数値だが、日本でも海外と同じ手法で調査を行えば、同様に高い数値になると推定できる。
日本の平成 20 年度は、消費者生活相談件数全国 938,720 件、東京都 125,281 件、ちなみに日本の人口は1億 2,751 万人(2009.10.1)。
関連資料として、消費者白書「A Better Deal for Consumers」を受け取った。何を優先させるかの政策ガイダンス書である。
意見交換の中から印象に残る点をいくつかご紹介したい。

  1. 消費者行政の起源:
    イギリスの長い消費者保護行政の歴史の起源は、13 世紀であった。フェリー業者が筏に牛・羊を搬送中、牛・羊を乗せ過ぎたため筏が転覆した事故が起き、牛・羊のオーナーがフェリー業者を訴えたことから始まるという。そして 21 世紀の今日の課題はデジタル分野であると言う。
  2. 費者保護と自由競争:
    イギリスでは、消費者保護と、規制によってビジネス界へ負担をかけ過ぎないことのバランスも課題だと言う。自己責任と自由な経済競争を保障する国ならではの特色でもあるが、説明を聞きながらそのことが言葉の端々から感じられた。
  3. パイロット事業と事例:
    カメラ店主が収監された話で、90 分のインタビューの冒頭で 10 分間も続いたことには驚いた。カメラ小売店で、新品デジタルカメラを購入したはずが実は使用済みだったという話。客からクレームがあり返品されたデジタルカメラを修理した店主は、新品のように偽装をして他客に販売したという事件。カメラの残像を消し忘れたため、新品カメラと思い込み購入した客が操作しているうちに、知らない人物の残像が現れてきて発覚したのだと言う。
    店主は何十台も偽装し収監されたが、代金は客に戻らない、しかし、イギリスが今年末からはじめる新パイロット事業の試みは、法廷を通さずに、行政が店主にペナルティを課して代金を返却させることが可能になるしくみであると言う。
  4. 審議への特例:
    商品やサービスの安全基準については、基本ルールに沿って行われるが、時に政治家主導もあったという。例えば、消費者の声が大きくなり、世論が高まり、マスコミが報道をする。マスコミの力が政治を動かし、政治家が国会審議して、安全基準が早急に決定したケースもあったと言う。

今回の視察を通して、イギリス以外でも、欧州全般に消費者教育、普及啓発、情報提供が発達している、と感じた。
フィンランドでは公立学校で消費者教育が行われているし、デンマークでは、公的機関から市民への広報が徹底している。デンマークの国営テレビがスポットを流して、「無駄をしないこと」、「質に敏感になること」等を常日頃国民にアピールしている。家庭医療診察所、歯医者、図書館、市の窓口等でさまざまな消費生活情報のパンフレットを手
に取ることができる。NPO 機関のデンマーク国立消費者協会は、危険な物は購入しないよう製品情報を提供し、消費者からもメーカーからも信頼を得ているという。
欧州全体にいえることは、堅実で無駄を嫌う民族性からか、質の高い消費者になる消費者教育、あるいは普及啓発や情報提供がまめに、日常生活の中で自然になされていることを、特記しておきたい。さらに、幼少期からの消費者教育が徹底している。子供たちが成長し、消費者意識やモラルの高い大人たちがどんどん増えていくことが、将来的に消費者保護行政にかかるコストを少なくさせる要因になるものと思う。
東京都では、平成 21 年度から 23 年度まで、金融経済教育モデル事業を実施する。小中学校の時期から、お金の価値やクレジットカードの使い方など消費生活に関する知識を深めるための授業を行う。日本は公立学校での消費者教育が緒についたところである。

イギリス リッチモンド・アポン・テムズ区を訪問して

実例をあげてブルース首席取引規準官が説明
イギリスのリッチモンド・アポン・テムズ区を訪問し、ブルース首席取引基準官( Mr. Bruce Iron manager, Principal Trading Standards Officer)から、消費者保護行政について具体的にお話をうかがった。地元の議員と行政官とが同席し、明るく機知に富んだ会話と、イギリス紅茶でもてなしてくれた。
生活に身近な区という立場で、消費者は「正しい品物を正しく購入する権利がある」という基本原則から、「公正な取引」や「安全な取引」など取引基準を細かくチェックしていた。電話やインターネットでの相談、問題の関連部署との連携により、特に弱者やお年寄りの被害を防ぐことにも精力的であった。
取引基準の細かい具体例としては、ガソリンの販売量や酒の量り売りやスーパーマーケットの秤の針にごまかしはないか等の検査、偽物検査、安全な商品かどうか、過剰包装はないか、など幅広い。
例えばライターについて、日本では子供のライターいじりによる火災が続いているが、イギリスのライターは着火ボタン以外にロック装置(チャイルドレジスタンス)がすでに義務化されていた。平成 18 年から、EU 加盟国 25 カ国で規制を義務化している。米国では平成6年にすでに規制をはじめていた。
「すべて安全なものだけが市場で販売されるべきである」という欧州の思想から、ライターや、花火、子供のおもちゃ等には特に気をつけていると、いくつか見本を展示して説明してくださった。
子供が遊んでみたくなるような ライターは販売禁止誤飲、針金によるケガ等危険のある製品は販売禁止

以上2カ所を訪問して、担当者の説明を聞きながら感じたことがある。それは、消費者行政の長い歴史を持ち、自己責任と自由競争を重視する伝統があるイギリスも、EUという枠組みの中で新たな道を模索しているのではないかということ。その例が技能省で始めるパイロット事業でもあるのではないか。
ライターの安全規制も、実は EU の枠組みの流れから規制したのだった。EU 加盟国は、EU が欧州に出した勧告や規制には原則遵守しなくてはならない義務があり、従ってそのまま 各国内で適用されていくのである。

ロンドンで見る東京渋谷
ロンドンを移動中にオックスフォードサー カスを通過すると、スクランブル交差点を見かけた。この交差点は、昨年 11 月、ウェストミンスター区(City of Westminster)が、渋谷ハチ公前スクランブル交差点をモデルにして、ロンドンの中心部の名所の一つである。
オックスフォードサーカスに、スクランブル交差点を完成させ、大きな話題を呼んだ。新聞報道では、Oxford Circus as it will look Shibuya-style と紹介された。ロンドンの繁華街で見た東京渋谷であった。

これからの展望

ライターを事例に挙げると、東京都はライターの火遊びによる火災事故が起きたことを憂慮し、この危険の芽を摘み取るために、昨年 11 月にいち早く国に対し法による安全規制を提言した。日本では子供の火遊びによる火災の7割以上は27ライターに起因(東京消防庁火災の実態)しているからだ。
都の提言を受け経済産業省が今年2月から検討を開始してくれたが、この間にも、2月練馬区では押し入れでライターによる火災事故で幼児2名が死亡、4月北海道では車内でライターをいじり、車が炎上し乳幼児4名死亡と連続している。早期の安全対策へ向けて法の整備が急務だ。改めて国に要望した結果、夏に結論をまとめる予定を前倒しして5月中にとりまとめることを経産大臣が表明した。
子供のライターによる火災は、親が目を離した隙に発生することが多いものの、親も24 時間注意し続けるのは不可能に近い。目を離しても危険が起きない体制づくりのためには、その根底にある「教育」に目を向けるべきではないのだろうか。

「デンマークでは、託児所・保育園の段階からまた家庭でも、ライターやナイフや溶剤やドア等は危ないものだという教育が徹底している。危ないからやめなさい、だけではない、なぜ危ないのかライターを使用しながら理由と結果を教えていく」とデンマーク在住 18 年の日本人が解説してくれた。市場には、安全なものだけが販売されて当然だとの思想が強く、例えば介護ベッドについては「国立補助器具センターで、国産も輸入製品も同様に実験を終えた製品が市場に出回る」、食品に関しては「国立食品管理局が、輸入品も含め常に実験している内容を報告書で消費者に提供する」、つまり安心していられるのは「デンマーク国民は国や政府をとても信頼しているので高い税金を払っていられるのだ」(同述)という。
記憶重視の日本の教育だが、こうしたらどうなってしまうのか「考える力」が教育の上でもっと大切になってくるのではないだろうか。

セントラル駅の切符検札機
デンマークの写真をご覧いただきたい。駅には改札機がない。写真はホームにある切符検札機だ。切符を構内で購入した後は、自分で乗る駅と降りる駅とを刻印する自己申告制であるにもかかわらず、キセル率は2%と極めて低いそうだ。2%の内訳は、ホームレス、麻薬患者、外国人等だ。いわゆるキセルという言葉も存在しないそうだが、料金を払って乗るのは当たり前のことであるという道徳教育(しつけ)が幼少期から徹底されていることが背景にあるようだ。

視察を終えて想うこと、それは消費者保護行政、交通政策、教育行政、これらの視察は一見別々のテーマであるかのように見えて、実はみごとに「教育」という点で一本の線につながっていたことである。消費者保護行政を担う生活文化スポーツ局と教育庁を所管する文教委員たちの視察として、感慨深い一本の線の再認識であった。
教育と社会生活は深い関係にあり、消費者行政がうまく機能するか否かは、幼少期からの、家庭、学校、社会での「教育」が「鍵」を握る。教育が徹底して行われることにより、犯罪の起きない国、事故に遭わない社会生活を持続可能にしていくことができる。
この結果、長い目で見て消費者保護行政のコスト負担軽減を図ることが可能となるのではないだろうか。

日本がものづくりの技術立国として、今後さらに成長するために、「人の命と安全」、「環境への配慮」を置き去りにしては業界の成長はないに等しい。業界団体への規制を躊躇していることにより、製品・食品による事故で次々と人命を失うことは、行政の失態と業界団体・ビジネス界の失墜にもなりかねない。そればかりか安全性のグローバル規格からも取り残されてしまうのである。
安全で良質な物を適正な価格で都民・国民へ提供する理念が企業にとって必要であり、消費者の声を反映した製品を開発しなくてはいけない。人の命と安全に貢献できる物を開発・販売することによって、企業の真の繁栄につながってくる。
そのための行政の役割は大きい。日本でも、ようやく業界が動き出し、自主的にチャイルドレジスタンスと言われるロック機能のあるライターを販売しはじめた会社が現れてきた。
消費者行政は、事故が起きて人が亡くなってからの後追いの対策では駄目だ。危険事故の未然防止のためにも、輸入品も国産品も含めて市場投入前の安全チェック機能をもっと発揮していかなくてはならない。
そして、幼児期からの教育にさらに注力していくこと、この教育により真に安全で質の高い成熟した豊かな社会をつくりだすこと、これが今後の重要な方向性ではなかろうか。