前東京都議会議員 (渋谷区選出)
下に掲載した写真、何だかご存知でしょうか。主に幹線道路沿い、住宅地などに設置されている大気汚染を常時測定している機器です。都内には全部で82カ所あり、24時間大気汚染の状況を監視している東京都の測定局です。そこでの測定物質のひとつ、浮遊粒子状物質(スス)は近年その濃度が低下傾向にあります。グラフを見れば一目瞭然です。東京都のディーゼル車排ガス規制は平成15年に開始されましたが、これはその規制の成果であり、「深呼吸のできる東京」には好ましいことです。 しかし、今後、世界の大都市の中でも最もきれいな大気を実現するためには、さらなるチャレンジが求められます。手綱を緩めることなく違反ディーゼル車の流入規制の監視を徹底するとともに、都民の健康と安全を守るために、微小粒子と呼ばれるPM2.5対策などの新たな課題にも、さらに積極果敢に取り組んでいくことが望まれます。 (写真1)(写真2)測定局と呼ばれる建屋と中の機器 渋谷区役所屋上に設置されている (グラフ)浮遊粒子状物質の濃度経年変化 黒いススが低減
東京の面積の3分の1は森林です。シカやツキノワグマが生息する広大な奥多摩の森林からクジラの回遊する小笠原まで多様な森が広がっています。例えば、伊豆諸島の御蔵島は「海に浮かぶ森」とも呼ばれるくらい、水と緑の美しい島です。 森は人々に様々な恵みを与えてくれます。しかし、東京の森についてはあまり知られてないのが実情です。もっと関心を向けてもいいと考えます。 例えば、多摩の森林は区部に住む人々にとっても大きなつながりがあるからです。レクリエーションや観光の対象であるだけでなく、森林のCO2吸収源としての機能など、地球温暖化対策や生物多様性の確保の観点からも重要です。さらに下流域に住む都民に「おいしい水」の供給や、ひいては東京湾の浄化などにもつながるなど、森林のもつ公益性は高いといえます。 しかし、多摩の森林では林業の衰退などにより森の荒廃が進んでいます。東京都も林業の活性化や「森林再生事業」などを実施していますが、都心部からの関心ももっと高めていくことが必要ではないでしょうか。そして、都民の共有の財産として、次世代に豊かな森を引き継いでいきたいものです。 (写真)森林再生事業の現場
平成20年11月末、機会があって、企業や団体からなる東京都の校庭芝生化応援団の結団式に参加することができました。 この中で東京都の名誉都民でもある川渕三郎さんの講演がありました。サッカーにまつわる興味深いお話をされる中で、川渕さんが校庭芝生化の運動を進めているのは、実はサッカーのためではなく子供たちのためだということでした。 外で遊ぶことが少なくなった子供たちの中には偏平足の子が多くなり、体の重心が後方に移り結果として背骨がきちんと育たず、その中で育まれる脳神経系統がしっかり発達せずに、「無気力」やすぐに「切れたり」する子が多くなっているのではないか、そのために裸足になって屋外で思い切り運動のできる環境が大切だ、という主旨のお話でした。また、足の不自由なお子さんが校庭の芝生の上を歩きたくて、友達の助けを借りて歩行訓練をして、元気に外で遊べるようになったことなども、感銘深く話されました。 もちろん、校庭芝生化は東京の緑づくりの一環ですが、子供たちの健全な成長や豊かな情操教育にも効果があり、そのためには裸足でのびのびと屋外で走り回れる環境づくりが大切であると、私もそのことを再認識させられた一日でした。 (写真1,2,3) 校庭芝生化された学校(東京都環境局)
東京湾の埋め立て地に立ってみました。 家庭や企業から出されたごみが、清掃工場などで焼却などの「中間処理」をされたあと、最後にはここにやってきます。広大な埋め立て地は、いつまでも使えるかのような錯覚に陥りがちであり、またかつての埋め立て地には、既にいくつもの施設も建っており、埋立地としての面影も見られない場所もありますが、東京湾の海面には限りがあります。今ある埋め立て地は可能な限り大切に使用することが大切です。 最終処分場の運営管理者である東京都は、ごみの最下流の位置から消費や生産の上流域に向かって、ごみ減量などの発信を強化することが必要です。処分場の業務に携わる人々は、暑い夏の日も寒風吹く冬の日も、ごみの搬入受入のチェックに怠りがありません。毅然とした態度を貫き通してほしいと思います。そして、東京都はそうした廃棄物問題の「最後の番人」の苦労を、「消費のあり方」や「生産のあり方」を変える活力として、ごみの減量に向けた様々な施策展開をすべきと考えます。ここにこそリデュース(Reduce;減らす)、リユース(Reuse;再び使う)、リサイクル(Recycle;再資源化)、いわゆる3Rの原点があると思います。■平成20年11月18日環境建設委員会で質問しました。 (写真1)埋立地の風景 (写真2)埋立地の風景 (写真3)サーマルリサイクルにより減量化されたプラスチックごみ
カラスが、街中でごみ袋の中身を喰い散らかす様は、以前に比べ少なくなったとはいえ、まだまだよく見かける光景です。不衛生であるだけでなく都市の美観を著しく損ねます。東京都も、区等と協力してカラスの捕獲に取り組んでおり、一定の効果を上げているようですが、元を断たなければだめです。カラスの餌となる「ごみ」をなくせばいいのですが、これがなかなか厄介です。ごみ集積場に防鳥ネットを掛けることや早朝・夜間のごみ収集を試みるなど、様々な取り組みが行われています。 そのなかで、渋谷区が都と連携して取り組んだ「防鳥かご実験」は町会・商店街の皆さんの協力も得て、平成21年2月に実施されました。防鳥かごは、軽くて、折り畳み式なので取扱いがかんたんです。こうした新しいチャレンジには都民や事業者の方々の協力が不可欠であり、今後その実験結果を施策に活かして欲しいと思います。 渋谷のまちから、ごみ問題を通した美しい東京のまちづくりを発信したいものです。
地球温暖化は、様々な気候変動や生物・生態系の変化、海面の上昇、農業や水産業への影響など、私たち人類の生存を脅かす深刻な問題になっています。また、東京では、地表の気温が周辺部の地域より高くなる、いわゆる「ヒートアイランド(熱の島)」という現象が進行しています。 東京都では、温暖化対策として、自然再生エネルギーの活用などにより、2020年までに2000年比で25%のCO2排出削減を目指しています。企業や家庭での積極的な取り組みがますます重要になってきます。平成20年、環境確保条例が改正され、国に先駆けて大規模事業所の総量削減義務と排出量取引制度導入が決まりました。 また、家庭では太陽エネルギー利用機器の導入促進のために、戸建住宅やマンションへの住宅用太陽エネルギー利用機器の設置支援策も導入されました。例えば、太陽光発電の普及には、東京都の補助金制度(標準的機器で都から30万円、国から21万円)や、渋谷区の売電補助(1KWあたり30円、上限42,000円)も決定されました。 でも、もっともっと別の効果も期待できるのではと考えています。それは、家庭への太陽エネルギー利用機器の導入をきっかけとして、家庭が電気を使う側だけでなく、電気を送る立場にもなり、家族の中で身近にできるエコ(環境)行動などを話し合ったり、節電による「環境家計簿」を考えたり、対話の中で副次的効果が生まれるかもしれません。学校や社会での環境教育促進と相まって、省エネ行動が自然に身に付き、ごく当たり前のことになり、次世代に「DNA」として引き継がれる、そんな家族間、世代間の暖かな「太陽の季節」の到来を期待したいですね。 (写真1)太陽光発電パネル (写真2)屋上は太陽光発電パネルと屋上緑化と
都内の中小河川は、都市化の進展による道路舗装や建物の建設、空き地の減少などにより、雨水が地下へ浸透しにくくなり、また、直接、下水道に流入することで河川の水量が減少するなど水辺環境の悪化がみられます。 再び、中小河川が心のやすらぐ水辺環境として機能するためには、水量の安定したきれいな水が必要であり、その水源として着目されたのが、下水の再生水の活用です。下水が、高度な処理技術により水質が向上し魚が泳げるほどのきれいな水に生まれ変わります。 平成7年から渋谷川・古川、目黒川、呑川の城南3河川に、この下水の高度処理水を落合水再生センターから導入し、城南3河川に放流することで清流を復活させました。 また、都は、平成20年11月に「渋谷川・古川河川整備計画」を策定し、水害から都民の命と暮らしを守るとともに、うるおいとやすらぎをもたらす渋谷川・古川の再生を目指しています。 (図1)渋谷川・古川の整備概要図 (写真1)地下調節池のイメージ (写真2)護岸整備のイメージ ※s8_detail.pdf:こちらのリンクから【渋谷川・古川河川整備計画】の詳細PDFがご覧いただけます。
平成19年6月に渋谷区内で発生した、温泉施設での痛ましい爆発事故を契機に、都内における温泉施設の可燃性天然ガス(メタン)に係る安全対策が進んでいます。 私も、議会での質疑を通して確認していますが、東京都は、国に先がけて平成19年10月に独自の安全対策指針を策定しました。その後、国において温泉法が改正され、可燃性天然ガスによる災害防止を法の目的に追加するとともに様々な安全基準を設け、平成20年10月に施行されました。その後、都では安全対策指針を改正し、法との整合性を図りつつ、防災情報の文書での引継ぎや消防署への事前相談など独自の対策を継続しています。 現在、都内には、温泉の源泉が155ヶ所(20年3月末)あり、都によって、温泉法及び安全対策指針に基づき、既設の温泉施設に対して、温泉法に新たに規定された可燃性天然ガスの濃度確認や温泉採取の許可の手続きを指導しています。 都民の安心・安全のためには、今後も不断の努力が必要です。(図表1)都内の温泉数(平成20年3月末)
湧水は、水路や池、川などの水源の一部となるとともに、豊かな自然を育み、人の営みにうるおいと安らぎを与えます。しかし、都市化の進展により湧水量の減少や水質の悪化など、湧水をとりまく環境が厳しくなりつつあります。 そこで、湧水への関心を高め、また、その保護と回復を図るため、水量や水質、湧水にまつわる由来、周辺の景観などに優れた湧水を「東京の名湧水」として、平成15年に選定しています。 選定した名湧水は、57カ所ありますが、特別区内においても16カ所の名湧水があります。例えば、柳の井戸(港区)、おとめ山公園(新宿区)、目黒不動尊(目黒区)、等々力渓谷(世田谷区)、そして渋谷区の清正の井(渋谷区明治神宮御苑内)などです。 皆さんも、ぜひ身近な名湧水に足を運んでみてはいかがでしょうか。(図表)「都内の名湧水 環境局のホームページ」より
都内では、かつて産業活動などにより多量の地下水を汲み上げたため、区部東部の低地を中心に地盤沈下が発生し、高度成長期には都内の広い地域で地盤沈下が進行しました。その結果、建物や道路、橋などが破壊され、また、河川堤防や護岸が沈下することにより洪水や高潮の危険が大きくなるなど、都民の生活は大きな影響を受けました。 都では、昭和45年の東京都公害防止条例、現在は、この条例を平成13年に全面改正した環境確保条例により、一定規模以上の井戸に対する汲み上げ規制を行っています。 現在では、地盤沈下は沈静化し、平成16年以降、年間2cm以上沈下した地域はありませんが、平成19年の調査では都内3ヶ所で1cm台の沈下量が観測されています。 地下水を多量に汲み上げれば、再び地盤沈下が生じるおそれがあります。一度沈下した地盤は再び戻らないことから、引き続き、井戸の所有者は、地下水の汲み上げ量を適正に管理することが大切です。 (図表)地盤沈下の経年的推移