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「熊本地震の人命救助等視察」編

警察・消防委員会管外視察報告 平成30年5月14日(月曜日)から5月15日(火曜日)

委員長 大津ひろ子

平成28年4月に発生した熊本地震は、28時間以内に二度にわたり震度7を観測し、発災後5日目で2,000回に達する余震を記録するなど、観測史上例の無いものでした。死者が180人を超える(平成29年1月13日時点、関連死含む。)など多くの人的被害が発生するとともに、住宅や道路、河川などの施設も甚大な被害を受けました。
熊本地震は、熊本県熊本地方の直下で起きた地震であり、いつ発生してもおかしくないと言われる首都直下地震の対策を進めている東京都、とりわけ、災害時の救助活動等にあたる警視庁及び東京消防庁を所管する警察・消防委員会では、この熊本地震発生時の災害対応、人命救助、避難誘導等の状況について調査するため、熊本県において視察を実施いたしましたので、その概要について報告致します。

【熊本市消防局】

1日目は、初めに、熊本市消防局を訪問いたしました。 熊本市消防局からは、熊本地震発生時における熊本市消防局の災害対応について説明を受けました。熊本地震の震源地である益城町と西原村の消防事務は、消防組織の広域化計画に基づき、平成26年4月から熊本市消防局が事務の受託を開始したため、発災当初から熊本市消防局の資器材・人員などの消防力が投入され災害活動力が強化されるなどの効果があったとのことです。
また一方で、発災当初から緊急消防援助隊が近県から応援に駆け付けたものの、他県からの応援部隊の活動拠点の確保や、受援側と応援側の役割分担の徹底、各部門の情報共有化の充実などが、問題点として挙げられていました。
説明聴取の後、救急の現場活動を想定した訓練の様子や消防局の所有する資器材について視察いたしました。
資器材の説明では、熊本地震の際にがれきの中から生後八か月の女児を6時間ぶりに奇跡的に救出した救助活動の話や、全壊した自宅の下から約5時間後に救出された女性の話、がれきの中の要救助者を探索する「ファイバースコープ」や、外部から生存者の心拍を探査する電磁波探査装置「シリウス」などの説明を受け、委員からは、資器材の使用方法や、災害現場でのロボット使用の有効性についての質問が出るなど、活発な意見交換が行われました。

【熊本県警察本部】

次に、熊本県警察本部を訪問いたしました。
熊本県警察本部からは、熊本地震における警察活動状況及び警察施設の被害状況等について説明を受けました。発災後の警察活動については、全国41都府県から延べ約28,000人の応援派遣を得たこと、一方で、派遣部隊の宿泊地点の確保や、派遣部隊の位置の把握及び派遣地域の説明を行う受援要員の不足、車両への給油等について苦慮したとの説明がありました。
委員からは、警察、消防、自衛隊等の役割分担や耐震改修工事の効果検証などについて質疑が行われました。

【南阿蘇(みなみあそ)村役場】

2日目は、南阿蘇村役場にお伺いし、熊本地震における人命救助、避難誘導等の状況及び取組等について説明を聴取しました。
当時の状況について、実際に救助活動に当たった阿蘇広域行政事務組合消防本部南部分署の方から話を伺うことができました。熊本地震の際の行方不明者の探索や救助は、土砂災害による道路の寸断等により、通常であれば車で5分ほどの距離を、20キロの装備を背負い2時間かけて徒歩で現地に入るなど、困難を極めたとのことでした。また、南阿蘇村の現状として、主要な産業である観光業が、道路の復旧の遅れなどにより未だ震災前の50%から70%までしか回復しておらず、今後のインフラの整備が復興の大きな鍵となっている等の説明がありました。
質疑応答では、断層帯の調査や各地区のまちづくり協議会からの要望事項、消防団活動についてなど、様々な角度から幅広い議論がなされました。
その後、阿蘇大橋落橋現場を視察しました。山の前面が大きく崩れ、その直下に位置していた阿蘇大橋が谷底へ崩落しました。そして、人々の日常生活もまた、跡形もなく失われてしまいました。現在、土砂の決壊防止対策作業を行うとともに(写真)、橋は約600m下流に架け替えられる予定です(平成32年開通予定)。
また、落橋により不幸にも災害に遭われた方の救助は余震が続く中、100人もの体制で行われたとの話を伺い、熊本地震の被害の大きさを目の当たりにしました。

【益城町(ましきまち)被災現場】

次に、震源地である西原村(にしはらむら)及び益城町に赴き、被災現場を視察しました。西原村小森の大切畑(おおきりはた)ダムでは、ダム右岸から北東へ向かい地震でずれた断層が地表に現れている現場を訪れました(写真)。

ダムは震災により地下に亀裂が入り漏水してしまい、水位が大幅に減少している状況を確認しました。また、益城町堂園(どうぞの)地区では、断層のずれにより電柱や畑のあぜ道が大きくずれている現場を視察し、地震のエネルギーの大きさを実感しました(写真)。

以上、2日間という限られた日程ではございましたが、視察を通じ、各機関の横断的な連携を図り、関係機関の情報共有・協力体制を充実強化する必要性を強く感じたところであります。
警察・消防委員会でも、都民の命と安全を守るため、各種災害対策を推進するにあたり、“誰一人取り残さない”「世界一安全な都市東京」を実現するため、今回の視察の成果を役立ててまいりたいと考えております。

ご多忙にもかかわらず、貴重なお時間を頂戴いたしまして、懇切丁寧なご対応をしていただきました、熊本市消防局、熊本県警察本部及び南阿蘇村の関係者の皆様に、この場をお借りいたしまして、厚く御礼を申し上げます。

最後になりますが、警察・消防委員会といたしまして、あらためまして、熊本地震で亡くなられた方々とそのご遺族に、深く哀悼の意を表しますとともに、被災された皆様に、心よりお見舞いを申し上げます。また、被災地の一日も早い復興を、お祈り申し上げております。